企業のトップは
何を聞き逃してきたのか

 1967年4月14日、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)は「もうひとつのアメリカ史」と題する演説の中で、当時米国の都市に急速に広がっていた人種差別が原因の暴動について、説得力ある見解を述べている。「暴動は声なき者の声である」と彼は言い、「アメリカは何を聞き逃してきたか」という問いについて、聴衆に真剣に考えるよう訴えた。

 2020年に起きたアマード・アーベリー、ブレオナ・テイラー、ジョージ・フロイドの殺害事件とそれに続く抗議のうねりを目の当たりにして、ビジネスリーダーたちは同様の問いを立て始めた。米国の企業が聞き逃してきたことは何なのか。自分の会社は何を聞き損なってきたのだろうか。

 ほどなくして私は、構造的な人種差別と闘いたいと願う無数の企業幹部から、その方法について助言を求められるようになっていた。私は実業界で30年の経験を持つ黒人男性として、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)、すなわちDEIの行動計画を、トップがどのように着手し、実施するかについて深く理解している。