IoTの大量データを
バックボーン内のMECで処理
そうした5Gに関連するソリューションの中で、ベライゾンの提案の大きな柱となっているのが「プライベート5G」である。
「工場や大規模プラント、ショッピングセンター、港湾など特定の敷地内に、自社だけで使える5G環境を構築することで、大量データを扱うアプリケーションでも円滑に動かすことができます。オペレーションの効率化など、さまざまな効果が期待できます」と川節氏は話す。
典型的な例は、IoT化された工場へのプライベート5Gの適用だろう。現状、工場の設備などから吸い上げたデータをクラウド(またはデータセンター)に集約し、クラウド上で分析した結果を工場に戻して改善に活かしている企業は多い。しかし、こうした手法ではビッグデータに対応できない可能性があると川節氏は指摘する。
「多くの設備がセンサーを搭載するようになれば、生成されるデータが爆発的に増加します。大量データをそのままネットワーク経由で送るのは、必ずしも合理的とはいえません。ネットワークの輻輳を招きかねませんし、お客様環境に高い負荷がかかります。そこで、私たちが提案するのが『マルチアクセス・エッジコンピューティング』(multi-access edge computing:MEC)の活用です」
図表1に示したように、データ処理機能を持つMECは、ネットワーク上にあり、データを生成する末端の各種装置とMECはプライベート5Gでつながれており、高速・低遅延・多数同時接続の通信を実現。MEC機器によるデータ処理の結果は、即座に末端デバイスに連携される。
図表1 IoT時代におけるMECの有効性

従来はデータをクラウド(またはデータセンター)に上げて、処理するやり方が主流。ネットワークの構成上処理時間もかかっていたが、MECにより、処理時間を短縮。全体のデータの流れを合理化し、ネットワークやクラウドなどのリソースの有効活用にもつながる。
たとえば、リアルタイム性が重視される場合には、すぐに末端の装置に処理結果を返して円滑な運転をサポートする。ディープラーニングで有効活用できるデータなら、クラウドに送って大規模な計算能力を用いるべきかもしれない。MECが処理の一部を担うことで、ビッグデータをハンドリングし、高度なオペレーションを実現できる。また、クラウドと拠点を結ぶネットワーク、クラウドそのものの負荷軽減につながる。
プライベート5Gを活用して人手不足の解消を目指す企業もある。工場や大規模プラントなどの広い敷地に張りめぐらせた配管、各所に配置した設備の点検を、人手に頼って行ってきた企業は少なくない。そこで、監視カメラやドローン、設備に取り付けたセンサーなどを用いて、多様なデータを収集し分析する。データ分析の結果はグラフなどで可視化されて管理センターに届けられる。もしも問題があればシステムが警告を発し、スタッフが現場に急行することになる。データとシステムを活用した自動化・半自動化によって、工数削減とともに、見落としなどの人的ミスを排除することも可能だろう。
このような取り組みを、予防保守につなげることもできる(図表2)。設備故障の予兆を検知し、タイムリーな部品交換などの保守が実現すれば、設備の稼働率向上が期待できる。それぞれの設備を製造したメーカーと必要な情報を共有すれば、より適切なメンテナンスを受けることもできるだろう。予防保守は故障による事故防止、機会損失の低減にもつながる。
図表2 プライベート5Gの構築事例

工場のラインなどに設置した各種機器類は、刻々と大量のデータを生成している。数値データ、画像データなど多様なデータをAIなどで処理することで、保守のタイミングを改善したり、故障の予兆をつかんだりすることができる。機器ベンダーと情報を共有すれば、さらに高度なメンテナンスが可能になるだろう。