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有能な人材が大幅に不足する時期が迫っている
ここ数年、企業はリストラによるコスト削減に熱中するあまり、みずからの競争力が失われる時期が迫りつつあることにほとんど無警戒だった。しかし早晩、かつて経験したことのない危機に遭遇することとなろう。というのも、有能な人材が大幅に不足する事態が生じるからである。
人口全体の高齢化に伴い、就労人口の高齢化も進んでいる(図「ベビーブーマーの高齢化」を参照)。人はより長く、より健康に生きるようになった。しかも出生率はかつてないほどの低水準にある。
図 ベビーブーマーの高齢化
この10年間の就労人口の増加率を見ると、年齢層ごとに大きな違いがある。ベビーブーマーの子どもたちである「エコー・ブーマー」が社会に出始めたため、最若年層(16~24歳。アメリカ労働統計局の年齢区分による)の増加率は15%に達するが、25~34歳の増加率はその半分にとどまり、次世代の経営を担う35~44歳に至ってはむしろ減少している。ベビーブーマーは中年になり始め、早い人は退職年齢に近づいている。そのため就労人口のなかで増加率が高いのは、年齢が高い3つの層である。
アメリカの就労人口全体で見ると、増加率には急激なブレーキがかかっている。1970年代、ベビーブーマーの台頭と共に、未曾有の数の女性たちが社会進出し、就労人口は30%近くも増加した。
90年代、ピークは過ぎたものの、比較的安定した増加が続き、10年間で12%増加した。さらに2010年まで、この状況は変化しないと見られている。しかし問題はそれ以降であり、増加率は3%ないしは2%に減少し、その後も横ばい状態が続くと予測される。つまり、就労人口の増加率は現在、年1%未満だが、2020年にはこれが0.2%という脆弱な数字に落ち込むわけである。
また就労人口は、年齢構成においても大きく変化しつつある。55歳以上の就労人口は、70年代には全体の18%だったが、2000年には11%未満に減少した。しかし2015年になると、20%に回復すると見込まれている。要するに、つい最近、55歳以上の就労人口は後にも先にもないほど縮小したわけである。
我々は、熟年社員(55歳以上)が若干減った職場にやっと慣れてきたところだというのに、今度は彼らの数を大幅に増やし、維持しなければならない。
北米における今後15年間の就労人口の増加を年齢別に見ると、50歳以上がその80%を占めている(ただし、外国生まれの労働者は除く)。西ヨーロッパ諸国に至っては、この割合はさらに高くなる。
46~64年までに生まれたアメリカのベビーブーマーは7600万人に上り、総人口の4分の1以上を占める。そして数年後、あるいは10数年後、彼らは60歳に達し、退職を考え始める。しかし、若者の数はベビーブーマーより大幅に少なく、とうていこの穴を埋めることはできない。