デジタル化によって、企業と顧客の情報の非対称性が薄れ、顧客の変化は企業の先を行くようになった。そうした時代においては、デジタルを駆使しながら顧客基点でビジネスや組織を変革できる人材こそが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)のコア人材となる。電通デジタルは、「DXコア人材」の内部育成を支援するプログラムを開発した。

学生からビジネスパーソンまで
実践的なDXナレッジを移植

 政府・自治体も民間企業もDXが待ったなしの状況となっている今日、デジタル人材の育成は、官民挙げて取り組むべき国家的な課題となっている。

 とはいえ、「DX人材」や「デジタル人材」という言葉の定義は曖昧だ。解決すべき社会課題、経営課題は組織によって異なり、求められるデジタルスキルやケイパビリティ(組織能力)も一様ではない。

「一般的には、ソフトウェアエンジニアやAI(人工知能)エンジニア、データサイエンティストなどがデジタル人材として想起されます。もちろん、そうした技術を使いこなせる人材は不可欠ですが、技術さえあればDXを推進できるわけではありません」。電通デジタルの小浪宏信氏は、そう語る。

 同社がデジタル時代に欠かせない人材として挙げるのは、デジタル技術を駆使してUX(ユーザー体験)を企画・実装できる“UX人材”である。

「顧客との接点がデジタル化したいま、企業が顧客に選ばれるサービスを提供し続けるには、CX(顧客体験)を基点として組織やビジネスを変革する必要があります。デジタル技術を使ってUX/CXやビジネスモデルをデザインし、実装できる人材が、DX推進のコア人材だと私たちは認識しています」(小浪氏)

 電通デジタルは数多くの企業のUX/CXをデザインし、実装を手がけてきた。知見は膨大に蓄積されており、UX人材を育成するためのナレッジやメソッドはふんだんにある。

 その知的資産を「デジタル人材の育成」という形で社会還元していく目的で、電通デジタルは2022年4月、早稲田大学と大阪大学で顧客基点のDXをテーマとする寄附講座を開設した。全15回にわたるこの講座では、DXの最前線で活躍する同社の幹部やクライアント企業のDX担当者らが講師として登壇し、ビジネスの現場での事例や課題をもとにした実践的なカリキュラムを提供している。