学生からは、「企業の最前線で行われているCXトランスフォーメーション(顧客体験変革を起点としたDX)の取り組みについて知ることができ、非常に刺激的だ」といった声が多く寄せられるなど関心は非常に高い。みずからも講師を務めた小浪氏は、「社会的意義の大きさを実感しています」と語る。10月からは、神戸大学でも寄附講義が開講される。

電通デジタル
CXトランスフォーメーション部門
部門長
小浪宏信

 デジタル人材育成のもう一つの取り組みとして注目されるのが、電通デジタルとビービットが中心となって2021年5月に設立された一般社団法人UXインテリジェンス協会の活動だ。

「UXの重要性を認識する企業は増えていますが、企画から実装までのプロセスを社内で回していける人材が乏しいことが大きな課題となっています。そこで、デジタルを前提とした時代によりよい社会をつくるために必要なUX企画力を有する人材の育成や、先進的なUX事例の共有などを目的として協会を立ち上げました」と、電通デジタルの桑山晃一氏は説明する。

 同協会では、UX人材育成の一環として、この8月に「UX検定 基礎」の第1回試験を実施した。

「幅広いビジネスパーソンを対象に、UXの基礎を習得してもらうための検定試験です。日々の業務においてUXの基礎知識を活用し、顧客基点のビジネスイノベーションを起こしていけるような人材を輩出することを目指しています」(桑山氏)

 今後は、「基礎」だけでなく、UXのスペシャリストや顧客基点で組織をマネジメントできる人材の養成に向けた検定試験も実施する予定だ。

企業の内製化ニーズに応える
「UX組織開発プログラム」

 企業向けには、「UX組織開発プログラム」を提供している。これは、電通デジタルがクライアント企業に提供してきたUXの企画から実装に至るまでの知見やノウハウを体系化し、UXを内製化するための組織づくりや人材開発などを支援するプログラムである。

「市場環境や顧客ニーズがめまぐるしく変化する中、UXの企画・実装を外部任せにしていては変化のスピードに追い付けないと感じる企業が増えてきました。そうした時代の要請に応えて、UXの内製化を支援するのがこのプログラムです」(小浪氏)

 UX組織開発プログラムは、①事前の組織診断、②方針策定、③教育プログラム、④事後の組織診断、⑤スキル標準化の5つのステップで構成される。