HBRとはプラットフォーマーである
編集部(以下色文字):竹内先生は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の米国本誌に、1980年代から数多くの論考を寄稿しています。HBRは、もともとハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の機関誌として始まりましたが、竹内先生から見てどのような存在なのでしょうか。
竹内(以下略):HBRは、今日的な言葉で言うと、プラットフォーマーではないかと思います。実務家の方がよく読んでいますし、それに加えて学者の方も読んでいます。普通、どちらかに偏ってしまうものですが、両方の読者がいる珍しい媒体です。ひとたび論文を発表すると「人材育成の研修で使いたい」という企業の講演依頼から、「ビジネススクールの教材に使えないか」といった教育機関の問い合わせまで、さまざまな依頼が来ます。
私にとってHBRとは、専門分野外のコラボレーションを実現してくれる「場」でした。たとえば、ソフトウェア開発の手法として広まった「アジャイル」に関する論文[注1]は、スクラムCEOのジェフ・サザーランドや、ベイン・アンド・カンパニー パートナーのダレル・リグビーと書きました。その反響は、15~16社の講演依頼が来るほど大きかったです。