職場における政治的対立が顕在化している

 2021年4月、ソフトウェア企業のベースキャンプ社でDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)委員会のメンバーを務めていた2人の社員が、社内のチャットプラットフォームに謝罪文を発表した。この2人の人物は以前、ほかの社員たちと一緒に、「傑作な名前リスト」なるものを作成していた。「へんてこ」と感じられる名前を持った顧客のリストを内輪でつくっていたのである。

 2人は謝罪文の中で認めた──このような行為は極めて問題であり、人種間の差別意識と、ヘイトスピーチやジェノサイド(集団虐殺)などの過激な行動を生み出す社会の仕組みを助長するものである、と。

 これをきっかけに、ベースキャンプの社内では激しい議論が湧き上がった。ある社員は、謝罪文がジェノサイドを引き合いに出したことをばかげていると批判し、社内に白人至上主義など存在しないと主張した。CEOのジェーソン・フリードは、「傑作な名前リスト」の件を陳謝する一方で、「針小棒大に騒ぎ立てる」べきではないと釘を刺した。