スピードと柔軟性が不可欠な新製品開発

 テンポが速く熾烈な競争が繰り広げられる今日の新製品開発の世界において、スピードと柔軟性は不可欠である。これまでの逐次型の新製品開発手法ではまったく役に立たない、と認識を改める企業が増えつつある。代わって、日本や米国の企業は一体型(スクラム型)の開発手法を使い始めた。その手法はラグビーで例えれば、チームが一つのまとまりとしてフィールド内を動きながら、その内部でボールがパスされていくようなやり方である。

 この一体型手法には6つの特徴がある。内在する不確定性、自己組織化する開発担当チーム、開発フェーズのオーバーラップ(重なり)、多重学習、さりげない管理、学びの組織的な伝達、の6つである。この6つはジグソーパズルのピースのごとく互いにぴたりとはまり、スピードと柔軟性のある新製品開発プロセスを形成するのだ。しかもこれに劣らず重要な点として、この手法はチェンジエージェント(変化の仕掛け人)としても機能する。すなわち、古く硬直した組織にマーケット中心の考え方とプロセス、そして創造性を持ち込む媒介手段にもなるのである。

 竹内氏は日本の一橋大学の助教授、野中氏は教授である。竹内氏の専門分野はマーケティングとグローバル競争、野中氏は日本において組織論や戦略論、マーケティングに関する幅広い著作がある。