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三星のマーケティング・チャレンジ
エリック・キムは1999年、三星電子に入社し、グローバル・マーケティング担当副社長を務める。そんな彼に、会社は一つ難題を課した。
この韓国ブランドを5年以内に売上げ、利益、そして名声において、業界のリーダーであるソニーに対抗する勢力に育て上げよというのである。もちろん一筋縄にはいかない話だ。
当時、三星は間違いなく最大の家電メーカーの一つだったが、消費者には無名も同然であった。同社は主に、多国籍大企業にコンピュータのモニターや半導体を供給する黒衣として、この30年間の競争をくぐり抜けてきた。
PDA(携帯情報端末)、携帯電話、DVDプレーヤーといった市場では、自社ブランドを掲げ徐々に進出を図ったものの、知名度に劣る低価格商品のサプライヤーとしか見られなかった。
それでもキムは、三星をだれもがその名を知るブランドへと育て上げ、このブランドをイノベーションと高品質の代名詞に仕立て上げなければならなかった。そこで、10億ドルのマーケティング予算──大変な額である──が与えられたが、カバーしなければならない地域やカテゴリーを考慮すれば、これとて十分とは言い切れなかった。
キムとそのチームは予算一ドル当たりにおける収益性を確実に向上させなければならなかった。つまり、より多くのマーケティング資源を短期と長期の両方で、大きい利益増が期待される投資機会に傾ける一方、低いROIしか見込めないところを避けなければならなかったのである。これは、グローバル企業にとって、困難を極める、言わば離れ技である。
たとえば、消費財のグローバル・メーカーの典型であるジョンソン・エンド・ジョンソンは、現在、250カ国で180カテゴリーもの商品を販売している。マーケティング資源がどこで浪費されているか、よりふさわしいところはどこかを把握するには、4万5000に上る商品に関して、そのカテゴリーと国別の組み合わせ──たとえば、ドイツにおける鎮痛剤とイギリスにおけるシャンプーの対比──について、膨大なデータを集めなければならないだろう。