メンタリングの魔法は働かない
メンタリングやスポンサーシップ、アドボカシー・イニシアティブなどさまざまな取り組みがあるが、これらすべての根底には、よく知られた原理がある。それは、成功した経験豊かな幹部を、前途有望な若手、特に上級マネジメント層の中の過小評価グループに属する人物と組み合わせれば、多くのメリットが得られるというものだ。
すなわち、「ジュニア」(キャリアに関するサポートを受ける人を筆者はこう呼ぶ)は、キャリアを積む中で成長し、協力を得る。また一方で、ジュニアをサポートする幹部である「シニア」は、事業に再びインパクトを与え、新たなスキルを学び、自分とは違う野心や優先順位、課題を持つ世代について理解するというわけである。
残念ながら、メンタリングによって魔法が働くことはほとんどない。ジュニアとシニアの関係はうまく噛み合わず、お互いに誤解し合い、昇進の機会は結局やってこないままである──こうした問題は、リモートワークやハイブリッドワークの時代には、意味のある個人的な交流がしにくくなるため、いっそう悪化する。ジュニアは自分の会社と一体感を持ちにくく、長く働き続けることが想像できない。企業は従業員の離職を防ぐのに苦労し続け、流れを変えるにはどうすればよいかとの悩みは消えない。