【本稿への反論】

ITはそもそも戦略的である
ジョン・シーリー・ブラウン(John Seely Brown)元ゼロックス チーフ・サイエンティスト
ジョン・ヘーゲル3世(John Hagel Ⅲ)元マッキンゼー・アンド・カンパニー プリンシンパル

ITスキルはいまだ不十分である
ハル・バリアン(Hal Varian)カリフォルニア大学バークレー校 情報マネジメント・アンド・システムズ・スクール学部長

ITの戦略的価値

 1968年、テッド・ホフというインテルの若いエンジニアが、コンピュータ処理に必要な回路を小さなシリコンの上に載せる方法を発見した。

 彼が発明したマイクロプロセッサは、一連の技術革新の引き金となった。デスクトップ・コンピュータやLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)、WAN(ワイド・エリア・ネットワーク)、業務用ソフトウエア、インターネットといったものを生み出し、ビジネスの世界は大きく様変わりした。

 商取引の根幹にはITが存在していることに異議を唱える人はいないだろう。ITは企業の業務を下支えし、広範なサプライチェーンを結合し、顧客とビジネスをつなぐ役割も高まっている。実際、コンピュータ・システムがなければ、ドルもユーロもその取引が止まってしまう。

 ITの機能と存在価値が拡大するにつれて、ビジネスを成功させる重要な資源と見なす傾向が企業にはある。事実、それは企業の支出動向に如実に表れている。

 アメリカ商務省経済分析局の調査によると、アメリカ企業の資本支出のうち、IT投資は65年には5%にも満たなかった。しかし、80年代初頭のPCの登場と共に15%に拡大する。90年初頭には30%を超え、90年代の終わりにはほぼ50%の水準へと達した。企業のIT投資はここしばらく弱含んでいるが、それでも全世界で見て、年2兆ドルを超えている。

 このような金額とは別のところで、IT崇拝も高まっている。経営幹部層が態度を変えていることが、このことを端的に示している。