権力という言葉は、アメリカでは、もっともいみ嫌われている言葉である。権力について話すよりも、金について話すほうがやさしいし、セックスについて話すのは、さらにやさしい。権力を持つ人はそれを否定し、権力を手に入れたい人は、それが欲しくてたまらないと思っていることを素振りにも出したがらず、また権力の陰謀に加担している人は、ひそかにやるのである。
しかし、権力は、効果性の高い管理行動において重要な要素であることが分かっているがゆえに、権力を秘所から外へ引き出さなければならない。有能な組織リーダーを見分けるスタイルとか技能を長年にわたって探し求めてみて、私をはじめとして多くのアナリストは、個人の資質や適切な状況が権力を生むといった要件を重要なカギと見ることを否定し、リーダーの真の権力の源泉を見出すようになってきている。
資源と情報に近づく手だてがあり、す早く行動することができるということは、より多くのことを達成し、より多くの資源と情報を部下にゆだねるということを可能にする。このことのために、人は“力”を持った上司を好むようになるのである。従業員が、自分たちの上司は上と外に対して影響力を持っていることを知ると、このような上司についている事実から自分たちの地位に誇りを持ち、一般的にそのモラールも高く、ボスを批判したり抵抗しようとする気分は少なくなっていく[原注1]。また強力なリーダーほど、権限委譲をし(忙しすぎて全部を自分でやれない)、部下の能力を高く評価し、部下を重要なポジションに配置するチームを作りあげるように見えるのである。