2人の女性社員に対し
グーグルはどのような処遇をしたか
白人女性のマーガレット・ミッチェルから、グーグルの人工知能(AI)倫理チームに加わらないかと誘われた時、黒人女性のティムニット・ゲブルはどう答えればいいかわからなかった。光栄な話だったし、興味もあったが、グーグルでは人種的・ジェンダー的な多様性が不十分だとわかっていた。友人たちからは、有色人種の女性にとってはとげとげしい職場環境になるかもしれないと忠告された。ゲブルが採用された2018年当時、グーグルで働く黒人従業員は米国の同社従業員の2.6%にすぎなかった。しかしミッチェルは、2人で力を合わせれば組織を大きく変えられるとゲブルを説得した。
だが、2人ともそれからすぐに社内の人種差別的、性差別的な傾向を目の当たりにするようになったと言う。そこで2人は、社内で従業員に個別に接触し、倫理や公平性(エクイティ)にもっと配慮するよう働きかけた。グーグルでなぜこうした問題が起きているのかを掘り下げ、同僚との間に橋を架けてポジティブな変化を起こそうとしたのだが、この取り組みはグーグルの幹部たちから強い反対に遭ったと2人は語っている。
2020年、事態は臨界点に達した。ゲブルはグーグルのAI研究所の一つ、グーグル・ブレインで働く女性のメーリングリストにメッセージを送り、「少数意見を黙殺した」と同社を糾弾したほか、社内のダイバーシティプログラムは時間の浪費だと評した。ゲブルによれば、彼女はその後まもなく解雇されたという(グーグル側は、ゲブルがみずから辞職したと主張している)。