□ オペレーションズ・マネジャーのスティーブ・タルボットが、ある製品グループの事業部長のもとでスタッフとしての仕事を始めたとき、彼にはラインの責任や部下や独自の予算はなく、ただ“業績向上案を模索せよ”という漠然とした命令があるだけだった。これを実行するため、タルボットは手始めに各製品ラインのマネジャーやセールス・マネジャーと交渉し、必要な経営資源を集めた。製品ラインのマネジャーに対しては、自分たちの製品を最優先してもらうためセールスと交渉する手間を省いてあげると約束して、彼らから予算を引き出した。金が使えるようになると、タルボットは次に各セールス・マネジャーと掛け合い、製品ラインごとに1人のセールスマンを雇うこと、そして採用は自分の手で行なうことを承知させた。
彼が次に取り組んだ分野はフィールド・サービス(営業所関係)だった。この分野の担当者たちは保守的で締り屋だから、タルボットは自分の上司のところへ行き、この分野に関する自分の勧告案に対して上司の支持を求めた。セールスとサービス部門がマーケット・シェアを伸ばしてきたので、タルボットがかつて考案した主要新製品をもっと売るように求める場合でも、彼にとって各製品ライン・マネジャーの支持を得るのは容易なことだった。技術部門の上級副社長から成功のいききつを本社役員に説明するよう求められたとき、彼の行動部隊が彼の統率の下に所期の機能を果たすように、“みんなが功労者になるのだ”ということをはっきりさせた。
□ アーサー・ドラムは2つの課から成る技術部の部長で、会社の製品品質を飛躍的に向上させる新式計測器を開発したいと思っていたが、この方法がうまくいくと思っているのは彼だけで、まわりの人間はみんなこれを必要ないか、割に合わないとしか考えていなかった。この計測器が会社にとって必要であることを説明する資料を数ヵ月かけて集め、彼は自分より二段階上の上司数人を説得してまわり、その開発に30万ドルを引きだすことに成功した。彼はつぎに、開発プロセス上のアドバイスをもらうためと、計器が実際に運転上支障ないことを期するため、すべての製造現場の代表を集めてタスク・フォースを編成した。