ある強い力の作用によって、世界は共通化へ収束しつつある。その力とは、テクノロジーである。それは、通信、輸送、旅行を、誰にでも手がるに利用できるものにした。辺境な場所、貧困にあえぐ人びとまでも、近代文化の魅力が求められるようになった。いたるところのほとんどすべての人が、新しいテクノロジーによって、耳にし、目にし、経験するすべてのものを欲求するようになった。
その結果、商売の世界が新しく変わった――以前には想像もできなかったほどの巨大な、標準化された消費財の地球市場が出現したのである。この新しい市場の変化に対応できる企業は、生産、流通、マーケティング、経営の面で、おそろしいくらいの規模の経済性の恩典に浴することができる。この恩典を利用して世界中の価格を引き下げるとしたら、旧来の世界市場に関する仮説にしがみついて何もなしえないでいる競争相手をつぎつぎ薙ぎ倒すこともできるだろう。
国による、地域による選好の違いは、今や消滅した。会社は、自国より開発のおくれた外国市場へは、売れ残った昨年のモデル――あるいは自国用の製品よりも品質を落とした安物の売り込める時代は去った。また、外国市場では一般的に、自国よりも高い価格、高いマージン、高い利益の通用する時代は過ぎ去った。