20世紀の多くの期間、世界のビジネス・マネジャーたちはひと続きの壁に直面してきた。マーケットや習慣、社会的・経済的・政治的な制度の境界を作り出している国家間の壁である。また、企業の利害と社会の利害を明確に区別するような企業と社会の間の壁である。生活の資を稼ぐ活動と簡素な生活を営むこととを分ける壁であり、仕事と家庭の間の壁である。職場の中にも、管理職と一般社員、部門と部門、ラインとスタッフといった壁がある。資材・サービスの納入企業(以下納入企業と呼ぶ)、顧客、提携企業などの取引先との間にも壁はあるのである。

 だが今や、壁は崩壊しつつある。

 グローバル化するマーケット、瞬時につながる遠距離通信、音速を超えて移動可能な旅行、国家間の離合集散、人口構成の変化、生産物と生産工程の両面にわたる技術面の変容、企業間提携、ヒエラルキーの崩れる組織――こうしたことが企業の構造そのものを変えつつあるのだ。ビジネスの厳格で不可侵の境界は、変化の波間に消えつつある。