製造戦略の本質を問う

 1980年代に、アメリカの製造業は、卓越した製造技術が生み出す力を再発見し、競争力を高める様々な活動を始めた。その多くの「製造戦略」は、「世界一流」の企業になること、つまり、いくつかの指標における業界のトップ企業を目標とした。この目標を達成するために、アメリカの製造業は少なくとも一つの改善プログラムを導入したのである。そうした改善プログラムとして、リーン生産方式、リエンジニアリング、ベンチマーキング(指標による現状の評価・改善)、そしてどこでも見られるチーム方式はもちろんのこと、TQM(総合的品質管理)、JIT(ジャスト・イン・タイム)、そしてDFM(製造を考慮した設計)を挙げることができる。

 最近の調査によると、このような改善プログラムによる活動のいくつかは成功したものの、その多くはうまくいっていないという。こうしたアプローチを早くから取り入れた日本企業においても、再検討を余儀なくされているケースが見られる。こうした問題含みの成果は不満や当惑を招くばかりか、改善活動が困難なのは経営管理に問題があるのか、改善プログラム自体に欠陥があるのかという議論も引き起こしている。

 しかし、この議論は方向性を誤っている。問題は改善プログラムでもなければ、その進め方でもないからだ。例えばJIT、TQMや他の3文字で表示される技法を導入することによって生産性を向上させることは、製造によって競争上優位に立とうという戦略とは異なるものである。リーン生産方式、継続的な改善、また世界一流の水準を望むことも、競争上の優位性を持つという戦略ではありえない。