情報技術(IT)は、マネジャーたちに両極端の影響を及ぼす。それは、マネジャーたちを魅惑するか、恐れさせるかいずれかである。恐れを抱くマネジャーたちは情報技術を避ける行動をとり、一方情報技術の魅力に取りつかれた情報技術部門は、自らの魅力の虜となり、精巧な技術的アーキテクチャー(設計思想)と壮大な情報モデルを構築して、システム開発のガイドとしている。こうした考え方をとる経営者は、事業変革の主要な触媒としての技術を奨励活用する。しかしそうした技術主導の解決は、機械の仕様の詳細を求める一方で、組織の構成メンバーが情報を収集し、共有し、活用する現実の活動を無視する傾向に陥りやすい。簡単にいえば、そうした立場に立つ経営者は、情報技術を賛美するだけで、人間の心理を無視することになる。

 どんなによくつくられた情報技術計画であっても、人間の本性によって障害が発生する可能性があるのは当然である。それは人間本性の善し悪しとは関係のないことである。それにもがかわらずテクノクラートはいつでも「エンドユーザー」の「非合理的な」行動に無警戒である。実際、情報技術に不安を抱く人たちは当然ともいえる理由を持っているのである。自社の最新の経営情報システムやグループウエアを過大評価している企業は、それを使いこなすための従業員教育にほとんど時間をとっていないのが一般的である。コンピュータ好きの人でさえ、多くの情報技術の仕事で融通の利かない構造やルールに混乱させられることがある。

情報マネジャーは、人々がどのように機械を使っているかではなく、
どのように情報を使っているかを考えることから始めなければならない。

 基本的なデータ処理、複雑な会計資料の作成、さらには電子メールによる世界的な規模での非定型メッセージの交換等々、様々な形で人々は情報を扱っている。大規模な組織の多様な情報ユーザーにとって、確実なことはただ一つである。それは、効果的な情報マネジメントは、人々がどのように情報を使うのかを考えることから始めるべきだということである――どのように機械を使うかということを考えることではない。