1990年代において製造業のグローバル・リーダーとなるためには、企業は2つの一見矛盾する形で優れていなければならない。第1に、常に個別分野の専門知識を涵養し、補い、ライバルたちをリードし続けるために必要不可欠な能力を持てるようにしなければならない。そして第2に、常に変化する組み合わせの様々な部門を、常に変化するやり方で互いに協力させ、常に変化する競争環境で勝てるようにしなければならない。言い換えれば、企業は、ある特定の時点において、競争相手よりも顧客ニーズにより良く適合する製品を、より早く、より効率的につくり出すために、最善の方法を見つけなければならないのである。
多くのメーカー、特に、組織を部門横断的なものに再編した企業は、様々な部門の統合を図りながら、個々の部門の優秀性を維持することがいかに難しいかをすでに体験している。「いったい2つを同時に達成することなどできるのか」と、経営者たちは口々に嘆く。だが、解決法は存在する。開発プロジェクトを創造的に活用することである。
各部門が集まる重要な接合点として、開発プロジェクトは組織の真の統合力が試される場となる。さらに重要なのは、開発プロジェクトは、各部門間の関係を強化する手段として用いることができる一方、個々の専門知識を向上させる余地を各部門に与えてくれることである。だが、このような成果を上げるためには、経営者は開発プロジェクトに対して、目的をしっかりと認識しつつ臨むとともに、自社の長所と短所がプロジェクトの目的達成にとってどの程度助けとなり、または妨げになるかを計算に入れて対処しなければならない。