30年から40年前、コンピュータというデータ処理の道具が現れて以来、我々は情報を過大評価したり、過小評価したりしてきた。私を含め多くの者が、企業モデルなる数式と、コンピュータの力によって、マネジメント上の意思決定を行い、かなりの程度まで事業を経営できるようになるという過大評価をした。しかし同時に、コンピュータを、よりよくマネジメントするための道具としてのみとらえるという過小評価もした。

 今日では、マネジメント上の意思決定を行ってくれる企業モデルなどというものを口にする者は、もはやいない。データ処理の能力が最も役に立っているのは、企業のマネジメントにおいてではない。建築物の構造問題にかかわるソフトウエアやCADなど、特定の業務においてであるにすぎない。

 しかも我々は、コンピュータという新しい道具を過大評価したり過小評価したりしただけではない。コンピュータが、我々が取り組むべき問題を大きく変えるということに気がついていなかった。人類の歴史が教えるように、道具とコンセプトは、相互に依存し、相互に影響を与え合う。一方が他方を変える。これが現在、コンピュータという道具と、企業というコンセプトの間で起こっていることである。