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今日、市場を制するためには、低コスト、低価格を維持しながら、どれだけ各顧客の個別のニーズに商品を対応させていくことができるかが鍵を握っている。このことは、ほとんどのマネジャーにとっての共通認識であるといえる。この目標を達成しようと、メーカーではFMSを導入したり、幅広い組み合わせの中からの選択だけで必要な製品ができあがるように部品のモジュール化を進めたり、ある製品群内において共有できるプラットフォームを設計するといった取り組みを行っている。しかし、驚くことに、製品それ自体にしか注目していないメーカーがあまりに多いのである。彼らは、自らの商品を差別化していくうえで極めて重要な役割を果たし、しかもコストや利益に重大な影響を及ぼすもう一つの要素を全く無視してしまっているといわざるをえない。その要素こそが、サービスなのである。
今や、サービスという言葉は、従来考えられていたような技術的な問題の解決、設備・製品の設置、トレーニング、メインテナンスだけにとどまらず、より幅広い内容を持つものになっている。例えば、製品のデザインやコストの削減、さらには実際の取引で重要になるリベートやボーナスなど、顧客を支援していくためのプログラムもサービスに含まれる。また物流管理や受発注、その現状を追跡するための電子データの交換(EDI)、顧客が求める機能を満たす最適原材料を判別するエキスパート・システム等の情報システムについても、サービスと呼ぶことがある。
市場競争に勝利し、顧客を獲得し、成長を持続していくためには、顧客の個別のニーズにサービス・パッケージを合わせていくことが重要であるが、大半のメーカーは、依然として、商品を売らんがために、いたずらにサービスを積み上げるようなことを行っているのが実情である。我々が調査したところによれば、メーカーは、顧客が求めている以上のサービスを、そのサービスに価値があるかどうか不安がらせ、しかもそのコストさえ回収できそうにないような価格で提供する傾向があることが明らかになっている。おそらく、顧客がどのようなサービスを求めているのかを、個別に把握できていない企業が多いのだろう。また、どのサービスを製品やコア・サービスに付随するサービスとするのか、あるいはそれ自体に価値があるため、別に料金を支払ってもよいと顧客が考えるオプショナル・サービスとして提供するのかといったことすら、理解できていない企業が驚くほど多いのである。そればかりでなく、自社が提供しているサービスについて、そのコストを把握できていない企業も非常に多い。また、非常に大きな負担となり、利益を大きく損なうことになろうとも、依然として多くの企業は、販売担当者に「おまけ」のサービスをやらせているのである。
しかし、ほんのひと握りではあるが、サービス提供にかかるコストを削減し、しかも顧客の要求に応えるためにサービスをより効果的に利用していけば、ビジネス・チャンスは拡大し、利益を向上させることができるということを認識し始めた企業が現れている。
我々は、これらの企業がどのようにサービスに取り組んでいるかをよりよく理解するために、広範囲にわたる詳細な調査を行った。まず手始めとして、我々は、イリノイ州シカゴ、ノースカロライナ州シャーロットにある多様な業種の企業のマネジャー達と4回にわたり会合を持ち、その後アメリカ、ヨーロッパ、日本の大手および中堅規模の企業22社に対しても、同様な調査を行っていった。
調査対象は、いずれも産業用市場を対象にビジネスを行っている企業である。つまり、企業や政府機関等、何らかの組織を顧客としており、一般の個人顧客はその対象にしていない。