企業が従業員を雇う目的はほとんどの場合、決められた一連の業務を遂行してもらうためである。募集したい職種を告知し、見劣りしない報酬を提示すると、応募者の列ができる。食費や家賃などの生活費を必要とする人の列だ。この場合、仕事とは目的を達するための単なる手段である。
企業がこの典型的なシナリオに沿って新たな従業員を雇った場合、雇用初日に「なすべき仕事」と「行動規範」について説明する。それによってリーダーは、少なくとも短期的には、当該業務の成果を予測し管理しやすくなる。だが、このような雇用のアプローチでは、最も生産的で創造的な職場環境を生み出すことはできない。
私たちは過去10年間にわたり、幅広い業界の多数の企業を対象に、新入社員がどのように教育されているかフィールド調査を実施してきた[注1]。対象業界は、エンタテインメント、ソフトウェア、金融サービス、製造、小売り、コンサルティング、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)などが含まれる。調査を通して、ほとんどの組織で新人研修の目的は共通していることがわかった。それは組織文化と仕事の要件について教え込むことだ。