会社の企業戦略を形づくっている、ひいては製造戦略を形づくっている特徴はいくつかある。例をあげれば、その会社が主として指向しているもの(市場か製品か)、その多角化の仕方(製品か市場か工程か)、その成長への姿勢(低成長か高成長か)、その競争戦略(高収益か高生産高か)などである。会社のそういった基本的な姿勢ないしは優先順位が確立されたならば、製造部門としては、そういった企業目的の達成を手助けできるように、その組織構造と管理の仕方を調節しなければならない。本稿で筆者たちは、“製品中心”組織と“工程中心”組織という2つの対照的な組織に考察を加え、製造組織が“製造の任務”の開発によってトップマネジメント陣のニーズを満たし得ることを明らかにする。

 製造組織に対するゼネラルマネジャーの関心の寄せ方は、航空会社に対する一般の関心の寄せ方と多分に似ている。航空会社の場合には、飛行機が延着したり、運賃が値上りしたり、衝突事故が起こったりしない限り、世間の注目を浴びない。順調に運航している限り、その存在はほとんど目につかない。だが、製造という分野は、このところ、しだいにゼネラルマネジャーの注目を浴びるようになった。つい2~3年前までは、それこそマーケティングと財務しかこの人たちの念頭にはなかったものだ。

 実のところ、このように関心を引くようになったのは、たいていの会社では、資源――投下資本、従業員、マネジャーの時間――の大部分が、現業部門で使われているからにほかならない。このことは、官民の別なく、製造組織についてもサービス組織についても言える。こういった資源は、当該組織の目的にかなうよう展開され、調整され、管理されなければならない。さもないと、目的の達成が阻害されるのは、まず確かだ。

 製造会社が直面している問題や圧力は、究極的には、工場現場に具体的な形をとって現われ、現場のマネジャーが何らかの組織構造を通じて、それらに対処することを余儀なくされる。不幸なのはそういった組織構造自体が、実は問題の一部である場合が少なくないことだ。しかも、製造組織に問題があると、同時に他の部門でも、問題が表面化する場合が少なくない――それもいろいろな形をとって。2、3の例をあげよう。

□ 高度の技術を持つ、さる急成長会社は、10年間にその規模が4倍になった。この会社の製造組織は、この期間の最後の時点においても本質的には以前と何ら変わりがなかった。つまり、この期間内に製品系列が非常にふえたり、以前は外部から仕入れていた部品を自家生産に切り替えたり、工場がふえたり、海外へもひろがったりしたというのに、相も変わらず製造担当副社長と強力な本社スタッフ陣が製造組織を支配していたのだ。このため、間接費やロジスティックス費がうなぎ登りになり、この製造組織はしだいに不振に陥り、方向を見失ってしまった。

□ さるコングロマリットは4つの事業部門を1つのグループにまとめた。財務とマーケティング戦略からは、これは当を得た措置だった。けれども、これらの事業部門の製造組織は、共通点がなかったし、内部統制もなく、全体的な調整も行なわれなかった。このため親会社は、かわるがわる大がかりな資本支出要求に直面したばかりか、それらの資本支出の絶対的なメリットも分からなかったし、それらにどういう優先順位をつけたらいいのかも分からなかった。