過去数年間、石油産業に関して、おびただしい量の文献が書かれてきたが、現在の状況をもたらす原因となったディレンマ、すなわち、消費者は安定した低価格を望み、一方生産者側は高収入を求める、という点に焦点を当てて分析したものはごくわずかであった。われわれの経済システムは前者を達成する方向で運営されているが、現実の政治や経済は、後者を勝ち取る力を生産者に与えている。

 この根本的なディレンマが、各国政府間、そして文字通り一国政府内部にまで、意見の対立を生じせしめる原因となっているのである。このため石油産業に対する攻撃は激しさの一途をたどり、さらにこれが石油供給に関する一般大衆の見方に混乱をもたらす要因ともなっているのである。われわれはここで、現在われわれが直面している現実の状況を直視してみよう。

 1970年代を特徴づけていたのは、われわれが消費者の論理および生産者の論理と呼んでいる2つの包括的な考え方であった。消費者の論理のもとでは、石油の利用可能性(availability)と価格は、消費者側の経済的ニーズによって左右される。生産者の論理のもとでは、消費者の論理に対するOPECの対抗手段として、利用可能性と価格は生産者の利益と、彼らの将来に対する見通しに合致する方向に向けられる。

 将来に関していえば、周知のようにあるひとつの方向はすでに閉ざされてしまっている。つまりわれわれはもはや、OPECの石油の価格と利用可能性を消費国のニーズによって決定できるという状況には置かれていないのである。逆に、石油輸出国は今や彼らの理論に基づいて行動している。これは彼らが自己のペースで、しかも独自の判断に基づく必要性に応じて自己の資源を開発していることを意味する。もちろんOPECの加盟国といえどもそれぞれ立場を異にしており、それぞれの国内的圧力、地政学上の位置、あるいは収入の必要度に従って行動している。しかし結果的には、利用可能なOPECの石油が需要を下回る大きな危険性が予想される。

 消費者の論理から生産者の論理への逆転のために、今後数年間、需要と経済成長、さらには供給に対するOPEC側の思考パターンに大きく影響する要因として、石油価格が経済問題の焦点に置かれると思われる。短期的に見て石油価格に関してどのような変化が生じるかが、その後の双方の行動に関して決定的な役割を果たすことになろう。