設立されたばかりの小さな調査会社が、限られた規模の割には、非常に複雑で形式的な組織構造を選ぶ。その会社は数年間、硬直化と官僚主義にあがいた末、ついにはそれより大きな会社に併合されてしまう。

 小売店チェーンストアの首脳幹部たちは、チェーンストアがその目的を達したずっと後になっても、これまでの組織構造にしがみつく。というのも、彼らの権力はその構造があるからこそ維持できるからである。この会社はやがて破産することになる。

 ある大手銀行は、当面の管理問題を怠ったとして“反抗的な”マネジャーを懲罰する。この場合、問題の本質はこのマネジャーではなく、新しいマーケットへの拡大を抑えている中央集権的な手続きにある。その結果、若い多くのマネジャーたちが次々に銀行を去り、競争相手が市場に進出して利益は下降線をたどる。

 これらの企業の問題は、他の多くの企業にもよくあることだが、現在の出来事とか外部のマーケット・ダイナミックスなどにではなく、過去の決定に深く根ざしているといえる。歴史的な影響力が、まさに組織の将来の成長を形づくるのである。しかしマネジメントは、成長を急ぐあまり、組織の発展段階において次のような重要な問題点を見落とすことがよくある。すなわち、われわれの組織はどうなっていたのか。現在はどういう状態にあるのか。また、これらの問題点に対する答えが今後進む方向にどのような意味を持つのか。

 ところが、マネジメントの視点は、このようなことを考えないで、市場の将来性をさらに正確に予測することが企業に新しいアイデンティティーをもたらすかのように、ともすれば外面的な方向――未来や環境に向けられるのである。

 企業は、将来成功するための多くの手がかりが、自社の組織やその成長発展状況それ自体のなかにあることに気付かないことが多い。そのうえ、自社の組織の発展問題を十分理解できないマネジメントの無能力さが、市場の機会の有無とは無関係に、企業を現在の発展段階のままに“凍結”するか、また、究極的に破産させてしまう。

 本稿での私の立場は、組織の将来を決定するのは、外部要因によることは少なく、組織の歴史によって決定されるのかもしれない、というものである。組織に関して歴史的要因を強調するのはなぜかというと、ヨーロッパの心理学者の伝統に従ったからである(彼らの理論は、個人の行動は主としてこれまでの出来事や経験によって決定されるもので、未来の出来事によってではない、というものである)。この個人発展における類推を組織発展の問題にまで広げて展開することで、成長している企業が経過する一連の発展段階を論じようと考えているが、まず以下の2点を定義しておきたい。