生産企業、特に米国の企業では今日し烈な競争に直面している。多くの企業にとって、それは実に、死活問題である。この挑戦が実にやっかいなのは、強烈な競争者の“秘密兵器”が単なる製品設計、マーケティング技術または財務体質といったものでなく、よりまねの難しい、卓越した生産全体の能力だからである。一方において、長い間、多くの企業は、生産というものを体系的に無視してきた。今日にいたり、その代価の大きさが明白となるにつれて、生産において失った卓越さを再構築するのは、容易なことではないことに気づきはじめている。

 大半の企業において労働者や資産の大きな部分は、生産機能に結びついている。長い間つちかってきた生産に関連する企業の姿勢、期待およびしきたりというものは、なかなか変えがたいものである。問題点に対し、単に大資金を投下したとしても長年にわたる放置を補えるものではない。実に、生産を強力化するためには、何年にもわたる規律ある努力が必要とされるのである。実際、生産業務の境界の“まわりをうろつく”という習慣を打ち破り、競争上の優位の源泉と見なすまでには何年もかかるのである。

 実務においては、もちろん、マネジャーにとっての挑戦は、“弱い点”と“強い点”というような分岐で示される単純なものではないことは、いうまでもない。すべての生産機能が達成する、ないしはそのために動くというような単一の目的はないのである。かわりに、いくつかの属性の下に総括できる生産の役割があり――表1の示すように――そしてその役割は連続した発展過程の段階として、とらえることができる。極端にいえば、ある企業では生産はマーケットにおける成功に何の役割も果たさないが、他の企業では、生産は競争戦略上の優位を形成する主要な源泉の1つとなるのである。

 この一連の可能性を理解することにより、マネジャーは自社の現状および効果的な競争力を持つ高次の段階へ移行するために必要とされる企業姿勢およびアプローチに対する変革を認識することができるのである。そのような理解は、ある状態から次の状態へと進歩する適切な速さというものについて判断するためにも役立つ。また、生産の貢献度を高次に維持するために、他部門において必要な変革を洗い出すのにも有用であるといえる。

表1 生産の戦略的役割における各段階

第1段階
生産のマイナス面の可能性を最少化:“内向無活性”

生産における戦略的な事項に関する決定には、外部エキスパートが関与する

内部的には、生産効率をモニターすることを主たる機能とする詳細生産管理システムが存在する

生産は矛軟で、反応的になっている

第2段階
競争相手と同等にする:“外向無活性”

“産業界のやり方”がとられる生産に対する投資決定の計画スパンは、1ビジネス・サイクルまで拡張している。

資本投資は主として競争者に追いつくためか、もしくは競争上の武器を得るため

第3段階
経営戦略に信頼できるサポートを与える:“内向支持”

生産における投資は、経営戦略と予盾のないように振りわけられる

生産戦略が策定化され・実行される

長期的観点から生産に関する開発と動向をシステム的に方向づけられる

第4段階
生産を基盤とした競争戦略を追求する:“外向支持”

新生産方法や技術の可能性を見つけ出すことに努力が向けられている

主要なマーケティング、エンジニアリング上の決定の初期に生産側も参画する(逆もしかり)。必要が顕在化する前に、生産の能力向上のため長期的なプログラムがとられる

生産の各段階

 これら各属性のもつ役割(段階)の個々について詳細に記したり、ある段階から次の段階へ移行する時に起きる問題点の概要を述べるまえに、ここで提案しているフレームワークについて、いくつかの点について述べる必要がある。