4つ目は「人を職務に縛りつけず、自由な人材移動を可能にする」というもので、人材の流動性を高めるということです。人が職務に縛りつけられていたら、その人が持つスキルを活かし切れず、企業にとっても当人にとっても大きな機会損失につながります。

田中 最近、多くのビジネスパーソンに衝撃を与えたものに、「今後およそ半分の仕事が自動化され消滅する」という予測があります。ところが4原則によれば、オートメーション化は仕事を奪うのではなく、人間のケイパビリティと融合し、効率を最大化することができます。日本は、いまだ労働力の流動性が低い状況ですが、我々が職務に縛りつけられているだけでなく、個々人の意識の中に、いまの仕事がなくなったらほかを探さなければならないという択一的なキャリア観があるのも事実です。ワークOSの4原則からは、職務はタスクであり、シェアできるものだということもわかってきます。

職務に対する意識のシフトは
世界的な潮流に

ジェスターサン おっしゃる通りです。職務に対する意識を変えるうえで、硬直化した仕組みでは先に進めません。本書でも複数の事例を紹介していますが、人が業務に貢献するためには、シームレスにチームワークを形成していくことが必要であり、特定のタスクやジョブ、活動に限定されてはなりません。そこで、レジリエンス、フレキシビリティ、アジリティを実現するために、「固定型人材」「フロー型人材」「ハイブリッド型人材」の3つの人材モデルを列挙しています。詳細は本でご覧いただきたいのですが、こうした人材モデルを受け入れることで、現在の職務に携わる従業員のままでも、プロジェクトやアサインメントごとに関与し、多様なビジネスモデルに対応できる柔軟な組織が生まれます。

 この本は英語版のほか、ブラジルやポーランド、イタリアで現地語版が出版され、今後中国語版も刊行予定です。各地から反響が聞こえ始めていますが、欧州では、いくつもの企業がコンソーシアムを形成し、複数の事業でこの本で述べていることを試してみようという動きも出てきています。中南米でも関心が高まっており、最近の職務に対する意識のシフトは、世界的な潮流と感じます。

田中 最後に、ジェスターサンさんから、この本を手に取る日本の読者にメッセージをお願いします。

ジェスターサン 日本人は非常に高い技能を持つ人が多い半面、労働人口は急速に縮小しています。組織のゼネラルマネジャークラスの方は、ぜひこの本を人事領域のリーダーに推奨していただきたいと思います。この一冊が、課題を打破する一つのきっかけになると信じています。いまこそ職務のOSをアップデートする時なのです。

ジェスターサン氏出演による「ワークOS」の4つの原則解説動画はこちら

 

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