デジタル技術が社会に広く浸透したことにより、顧客接点のデジタルシフトはいまや不可逆的な流れとなっている。たとえば、スマートフォンを使って手軽にサービスを申し込んだり、商品を注文できるようになった。
一方で、CX・UX(ユーザー体験)の企画・デザインが不適切なために、ユーザーが手続きに手間取り、いらいらしてコールセンターに電話をかけるといった、新たなペイン(痛み)が生じている。その結果、コールセンターの担当者が怒りや不満のはけ口となり、EXの低下をもたらしている。
「効率化最優先でデジタル技術を導入し、画一的なUXを提供することは、デジタルの負の側面を増大させ、LTVを損なうことになる可能性があります」と松井氏。

ビジネストランスフォーメーション部門
ビジネスデザイン事業部 事業部長
松井崇司氏
そして、「機械的なデジタル体験ではなく、人の感情を深く理解し、デジタルと人を融合させた顧客対応によって、共感や信頼を醸成し、CXとEXをともに高めていくことが重要です」と桑山氏は続ける。
そうしたデジタルと人を融合させた新価値創造のための次世代CXのコンセプトとして、同社が提唱するのが、「ヒューマナイズド デジタル エクスペリエンス」(HDX)である。
HDXを実現する3つのポイントとは
HDXとは、「カスタマージャーニーのあらゆるステップ、シーンがデジタルでカバーされるこれからの“Digital Anywhere”時代に向け、人とテクノロジーの融合による人間味ある顧客体験」と定義できる。
近年、企業はカスタマージャーニー全体のデジタル接点、人とのリアルな接点におけるデータを一元管理し、デジタルと人がシームレスに連携するオムニチャネル的な世界観(下の図表の左側)を目指してきた。
「この世界観では、データに基づくシームレスなサービスを提供できたとしても、対面接客のように人間味のあるサービスを、いつでも、どこでも提供することができません。この課題を抜本的に解決するため、人間味のあるサービスや応対をカスタマージャーニーに遍在させるコア機能を中心に置き、そこからあらゆるデジタル接点に人間味のあるサービスを展開するのがHDXの世界観です」と松井氏は説明する。