優秀なプロフェッショナルは
実は学習ができない
1990年代の厳しさを増す事業環境下で成功を切望する企業は皆、まずは根本的なジレンマを解決しなくてはならない。つまり、市場での成功が学習に左右される傾向が強まる中、どう学習すればよいのかわからずにいる人が大半だというジレンマである。そのうえ、「学習方法に最も長けている」と衆目の一致するような人々は、実際はそれほどでもない。ここで念頭に置いているのは、高い学歴と大きな権限を持ち、強いコミットメントを示す、現代企業の要職を占める人々である。
たいていの企業はこのジレンマへの対処にひどく苦戦するだけでなく、ジレンマの存在に気づいてさえいない。というのも、学習とは何か、どう実践すべきかを、正しく理解していないのである。この結果、学習する組織への転換に努める中で、2つの誤りに陥りがちだ。
一つには、大多数の人々は学習を非常に狭くとらえて単なる「問題解決」と混同し、外部環境における誤りを見つけて正すことに躍起になる。問題解決は重要である。ただし、たゆみない学習を実現するには、マネジャーも一般従業員も、組織の内側に目を向けなくてはならない。自身の行動を批判的に省みて、ともすれば組織の抱える問題をうかつにも悪化させている実情に気づき、そのうえで行動を改めるのだ。とりわけ、問題の特定と解決に向けた取り組みそのものが、問題の根源となりうることを、学ばなくてはならない。