サマリー:大量のデータを学習し、巧みな文章や画像などをつくり出す生成AIは、人の能力を拡張し、顧客接点に大きな変革をもたらそうとしている。人と生成AIの融合で顧客体験はどう変わるのか。電通デジタルの山本覚氏が語る。

電通デジタルは、電通グループでAI(人工知能)開発とビッグデータ解析をリードしてきたデータアーティストを合併した。これにより、クライアント企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)やイノベーション創出を、より力強く支援する体制が整った。クライアント企業の新たな価値創造をどう実現していくのか。電通デジタルにおけるAI活用戦略のキーマンに聞いた。

AIのビジネス実装を目的に合併を果たす

 国内屈指の総合デジタルファームとして、1100社を超えるクライアント企業のDXや顧客体験(CX)デザイン、デジタルマーケティングなど多岐にわたる経営課題の解決を、データとテクノロジーを駆使して支援してきた電通デジタルは、2023年4月、AIカンパニーのデータアーティストとの合併を果たした。その狙いについて、合併前のデータアーティストの代表取締役であり、現在は電通デジタルの執行役員としてAI活用戦略を統括する山本覚氏は、「クライアント企業および当社のビジネスに、AIを実装することです」と説明する。

 電通デジタルはDXコンサルティングや変革の基盤となるITプラットフォームの設計・構築、マーケティングコミュニケーション革新などを事業ドメインとして、クライアント企業のビジネス成長に貢献してきた。その同社が、データアーティストが持つAI技術開発力とデータ解析力を事業の中核に組み込むことで、「言わば“製販一体”の体制で、クライアント企業にとって最適なAIソリューションを提供することができます」(山本氏)。

 データアーティストは、テックベンチャーとして2013年に創業後、2018年に電通グループに参画。独自のデータマーケティングプラットフォームの構築や、AIを活用してテレビ視聴率を予測し広告枠の最適運用を行うシステムの開発、企業のウェブサイトを訪問したユーザーの行動を精緻に分析しコンバージョン(成約)率を改善するサービスの提供など、電通グループにおける中核的なデータソリューション開発で、そのケイパビリティ(組織能力)を発揮してきた。

 また、モンゴルの開発拠点で最先端のAI研究開発を進めるほか、東京大学未来ビジョン研究センターとの共同研究を継続的に実施し、高度な技術と専門性を磨き続けている。