文章や画像などを生成するAIについても、世界中で話題になる前から、その技術を応用したソリューションを開発してきた。その例として、自然対話モジュールを活用したAIキャラクター「AIタミ子」や、“やみつきになる味”を学習して最適のレシピをつくり出す「AIせんべい」などが挙げられる。そうした取り組みの集大成として電通デジタルからリリースされたのが、キャッチコピーやデザインなどを生成し、広告クリエイティブ制作の効率化やプロセスの革新を実現する「∞AI」(ムゲンエーアイ)だ。

 これまで、広告制作におけるAI活用は、広告効果予測が中心だったが、∞AIは、訴求軸の発見からクリエイティブ生成、効果予測、改善に至るまでのプロセスをAIによって包括的にサポートする。「人に寄り添い、人の可能性を拡張する」をコンセプトとした∞AIを活用することで、「クリエイターの能力が拡張され、質的にも量的にも広告制作物の格段のレベルアップを図ることができます。それによって、クライアント企業のビジネス成長に貢献できるものと確信しています」と、山本氏は力を込める。

 2023年3月からは、米オープンAIが開発した次世代言語モデル「GPT-4」を∞AIに実装し、試験運用を始めている。

 これからも、人の可能性を拡張するAIのビジネス実装を加速させ、クライアント企業の事業変革とCX変革の伴走型支援という電通デジタルの強みを、さらにブラッシュアップしていく方針だ。

生成AIの活用で実現する「HDX」の世界観

 AIのビジネス実装の領域として電通デジタルでは、デジタルマーケティングのほか、経費申請や出張旅程作成の自動化といったクライアント企業の間接業務、コールセンター運用の効率化やコミュニケーションの改善提案といった顧客対応業務、企業に蓄積されている暗黙知やルールなどの膨大なナレッジの中から、誰でも必要なものを必要なタイミングで簡単に引き出せる仕組みの構築などを視野に入れる。

 ナレッジ共有の仕組みについては、その構築に向けたプロジェクトが電通デジタル社内で動き始めており、段階的に電通グループ内、そしてクライアント企業へと広げていく計画だ。「将来的には、クライアント企業と電通グループのナレッジやデータをAIで相互にかけ合わせて、新たな価値創造を実現していきたいと考えています」。

電通デジタル
執行役員
データ&AI部門 部門長
山本 覚

 また、電通デジタルでは、デジタルと人を融合させたCXの次世代コンセプト「ヒューマナイズド デジタル エクスペリエンス」(HDX)に基づいた、ビジネス変革支援を本格的に展開し始めている。HDXを一言で言えば、カスタマージャーニーのあらゆるステップ、シーンがデジタルでカバーされる時代において、人とテクノロジーの融合によって実現する人間味のある顧客体験と定義できる。