杉田 私も最近痛感しているのは、新しい形の組織でリーダーシップを執ることの難しさです。既存の固定的な組織の中で、そこにいる人がチームメンバーをリードするという従来の組織なら比較的簡単でしょう。同じ組織のメンバーであり、ずっと一緒に仕事をしてきた関係性もある。さらにヒエラルキーがあり、互いの立場も明確です。
ところが、社内外、国内外の人材を交えた新しい構造の組織では、率いていくプロジェクトマネジャーやリーダーが実行しようとしていることに魅力があり、意義を感じられるものであることが欠かせません。それが人を引きつけ、組織としてのまとまりを生み出すからです。リーダーに求められる資質が変わりつつあると感じます。
白井 組織がスキルベースでメンバーをそのつど構成して、新しいビジネスモデルやファンクションを生み出していくとなると、いまおっしゃったように、リーダーシップのスタイルとして、昔ながらのヒエラルキーが馴染みにくくなります。
強制権がない比較的フラットな構造の組織体では、ミッションを示したり夢を共有したり、もしくはリーダーの魅力的な人柄自体で人を引き込んだりしていく。そんなリーダー像が求められるということですね。
杉田 その時重要になるのは、リーダーのレピュテーションです。ブランド力と言い換えることもできるかもしれません。「この人がいるならやってみたい」とか、「あの人のやることはいつも大変だけれど、一緒にやると力がつく」といったレピュテーションがその人のブランドになる。
白井 そうしたリーダーシップを発揮できる人はそれほど多くありません。どこにいるとお考えですか。
杉田 たしかにあまり多くないとは思いますが、たとえばベンチャー企業の経営者には、そうした素養を持った方が多いように思います。ベンチャー企業を動かしているリーダーの多くは、常に人材の流動性が高い中で経営を行っており、常にミッションやパーパス、ビジョンを研ぎ澄まし、人材を引きつけ続けています。
白井 最後に、この本をどんな人に読んでもらいたいと思われますか。
杉田 いろいろな会社、いろいろな組織の人たちに広く読んでもらいたいですが、特に若い人にはお薦めします。将来はこうなる可能性があるのか、ということをインプットしておくことは大きな意味があります。
最近私は、仕事は「終身雇用」ではなく「終身学習」ないしは「終身成長」へと変化していると言っています。ただ、ここでいう学びや成長は、自分にとって本筋のスキルやエクスパティーズをどう広げていくのか、どう深めていくのかということを指しています。
いまあちこちで叫ばれているリスキリングでは、たとえばデジタル領域に関係がない人でもデジタルを勉強する必要があるようにいわれることもありますが、そうした職種に転職するのでなければ、畑違いのことを無理して始める必要はないと思います。
一方でエグゼクティブも、この本を読む意味があると思います。エグゼクティブになればなるほど、過去の成功体験に囚われて、自分で調達したリソースで固めたいという思いを抱きがちです。しかし、その手法では、新しいビジネスに対してリソースに限界が生じます。そのためにも、スキルベースで雇用を考えていくことが大切です。その感覚をこの本でつかんでほしいと思います。
白井 本日はありがとうございました。
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