AIの正しさとは何か

 ほとんどの人はたいていの場合、正しいことを成し遂げようとする。しかし、「正しい」とは、言うまでもなく相対的なものである。生成AI(人工知能)が社会現象を巻き起こし、世界を救う力を秘めていると歓迎される一方で、文字通り「この世の終わり」だと批判される昨今、正しさの相対性は特に顕著になっている。

 世界中のテクノロジー業界が、目覚ましいスピードでこのような新しい技術領域を切り開く中、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)はいくつかの疑問について考えてきた。テクノロジー業界のリーダーは、どのような価値観に導かれて意思決定を下しているのか。どのような思想、文化的な見通し、マインドセットを判断材料として、優先順位を決めているのか。こうした倫理的枠組みは、AIの開発方法に関して、どのようなリスクを抱えているのか──。

 これらの疑問に答えを出すため、テック業界の歴史とAIの倫理に関して、6人の専門家に意見を聞いた。その答えからは、テック業界の意思決定を牽引している文化とメンタリティが浮き彫りになった。また、誰もが将来直面することになるAIの機会と脅威について、今日のリーダーのエートスから何を読み取れるかも明らかになった。