サマリー:アフラック生命保険では社長をはじめとする上級役員が長時間討議したうえで人財マネジメント制度改革を実施し、その運用のモニタリングと改善を高頻度で行っている。人財マネジメントを軸とする同社の成長戦略に迫る... もっと見る 閉じる

人的資本経営が注目される今日だが、会社のパーパス(存在意義)と社員個人の想いのベクトルをどう合わせ、社員の成長を企業成長に結びつけていくかなど課題は多い。日本におけるがん保険のパイオニアであり、リーディングカンパニーでもあるアフラック生命保険は、長い時間をかけてその枠組みや文化を築き上げ、持続的な成長を遂げてきた。その成長戦略を、コーン・フェリー・ジャパンの柴田彰氏が深掘りする。

すべての意思決定はコアバリューに基づく

柴田 外資系生命保険会社として日本に進出され、2024年で創立50周年を迎えるそうですね。

森本 当社は「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という「創業の想い」から、日本で初めてがん保険を提供する会社として1974年に営業を開始しました。

 当時、がんは不治の病と考えられており、医師は患者本人にがんを告知しないことがほとんどでした。ご家族は患者本人にがんだとは言えません。経済的なことも含めて「どうしたらいいかわからない」と悩んでいらっしゃる患者さん家族が多く、保険会社として給付金・保険金を迅速にお支払いすることはもちろんですが、そうしたお客様のお気持ちを受け止めることが私たちの出発点でした。その後、保険商品の提供だけではなく、日本初の「がん電話相談」を設けたり、がんで親を亡くした高校生のための返還不要の奨学金制度を立ち上げるなど、これまでさまざまな活動に取り組んできました。

 そうした姿勢が日本社会に受け入れられ、2023年3月末でがん保険の保有契約数は約1500万件、医療保険や介護保険などを含めると約2300万件のご契約をお預かりする保険会社に成長することができました。

柴田 そもそも保険自体が公共性が高く、社会的責任の大きい商品ではありますが、創業の想いを含めて会社としての基本的な価値観をすべての意思決定の基準とし、それをぶらさずに長く続けている御社のような存在は、非常に稀有な例だと思います。

森本 そう言っていただけると光栄です。先ほど申し上げた創業の想いに加えて、お客様をはじめとするさまざまなステークホルダーに対する約束としての「アフラック・ウェイ」、「お客様第一」や「人間尊重」などで構成される「企業理念」、そして「『生きる』を創る。」というブランドプロミスが、当社のコアバリュー(基本的価値観)です。

 当社は、社員全員がコアバリューを意識せずとも当然のように実践できる企業文化を目指しています。

柴田 コアバリューに基づく経営を日々どのように実践しているのですか。