森本 当社では、「コアバリューに基づくCSV(共有価値の創造)経営」を経営戦略のフレームワークとしています。つまり、独自の経営資源や専門性を活かして当社が向き合うべき社会的課題を解決するとともに、経済的価値も創出する、その起点はコアバリューにあるということです。

 コアバリューを常に原点に置いたうえで、内外環境の変化を踏まえた長期ビジョンを描き、それを中期経営戦略や単年度の経営戦術に落とし込み、各部がビジネスプランを立てます。コアバリューから各部の業務までが整合的につながっているのです。

 経営レベルでも現場レベルであっても、何らかの判断をする時は必ずコアバリューに立ち返ります。会社全体がコアバリューを起点に動く仕組みや文化を50年かけて、試行錯誤しながらつくり上げてきました。

森本晋介
Shinsuke Morimoto
アフラック生命保険
コーポレート部門 統括、人財マネジメント戦略・総務部門 統括
取締役専務執行役員

柴田 御社の中期経営戦略では、5つの柱の最初に「多様な人財の力を引き出す人財マネジメント戦略」を据えています。最近は人的資本経営が注目されていますが、経営戦略のトップに人財が来るというのはアフラックの大きな特徴ですね。

森本 コアバリューに基づくCSV経営を実践するのは社員ですので、経営戦略上の優先順位のトップは人財です。現場の社員一人ひとりがコアバリューに共感し、能動的に実践することが、イノベーションやお客様エンゲージメントの向上につながります。その意味で、当社のビジネスモデルの中心は人財であり、人財こそが競争力の源泉だととらえています。

柴田 私たちは御社の人財マネジメント制度改革をサポートさせていただきましたが、その制度改革プロジェクトに社長をはじめとする経営陣が膨大な時間を費やしているのを目の当たりにして、本気度と真剣さを痛感しました。

森本 いわゆるジョブ型の職務等級制度を基軸とする人財マネジメント制度への改革は、「多様な人財が自律的に働き、最大限に力を発揮する」という理念の下で行いましたが、制度に魂を吹き込むためには経営陣のコミットメントが重要です。人財マネジメント制度改革は、人事部門ではなく社長をリーダーとする上級役員によるプロジェクトが中心となり、企画検討段階から制度導入まで計86回、126時間に及ぶ討議を行いました。

 熟議を重ねたことによって制度設計が洗練されていきましたし、何よりプロジェクトメンバーである上級役員にとっては、自分たちの想いを込めた制度になったと思います。制度導入前にはプロジェクトメンバーみずから担当部門の社員に説明と質疑応答を行い、新制度の理念や内容がしっかり理解されるように努めました。そうしたアプローチが、制度に対する期待や納得感につながったと確信しています。

社員のWillと会社のMustを一致させる

柴田 彰
Akira Shibata
コーン・フェリー・ジャパン
コンサルティング部門 責任者
シニア クライアント パートナー

柴田 どんなに優れた制度でも運用を軽んじると、「仏つくって魂入れず」になってしまいます。ジョブ型の人事制度を導入しても、運用にエネルギーを注がないために、うまく機能しないケースがよくあります。

森本 当社の人財マネジメント制度は、各部門が主体となって運用する「部門型人財マネジメント」を採用しており、社長をトップとする「人財マネジメント政策委員会」がそれをモニタリングする仕組みになっています。

 アフラックは、会社にとってのMust(コアバリューに基づくCSV経営の実践)と、社員のWill(内発的モチベーションとしてアフラックでやりたいこと)を一致させるウイン・ウインの関係を目指しています。