サマリー:日本のデジタルの競争力は、64カ国・地域中32位と世界に後れを取っている。この後れを取り戻し日本のデジタル化を加速させるカギになるといわれているのが「デジタルエシックス」(デジタル倫理)だ。

「デジタルエシックス」がデジタル化を加速させるために重要であるとして世界で注目されつつある。折しも、2024年2月28日、『デジタルエシックスで日本の変革を加速せよ──対話が導く本気のデジタル社会の実現』(ダイヤモンド社)という書籍が刊行された。執筆したのはNECの専門家たちだ。デジタルエシックスとはどのような考え方なのか、いまなぜデジタルエシックスに取り組むべきなのか、海外の動向なども交えて語ってもらった。

日本の競争力向上のカギ「デジタルエシックス」とは

 ChatGPTに代表される生成AI(人工知能)が日常にも普及するなど、デジタル技術の世界的進歩がさまざまな分野に大きな変革をもたらしている。日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)も加速しているように見えるが、「日本のデジタル競争力は年々低下を続けています」と語るのは、NECフェローの今岡仁氏だ。

NEC フェロー今岡 仁 氏

 スイスのビジネススクールの国際経営開発研究所(IMD)が発表している「世界デジタル競争力ランキング2023」では、64カ国・地域のうち日本は32位。「評価指標の中でも、『ビッグデータとアナリティクスの活用』においては、64位と最低水準にあることは深刻にとらえる必要があります」(今岡氏)

 日本のデジタル化が進まない背景について、NEC環境・品質統括部エバンジェリスト(AI・QMS・法務)の北村弘氏は次のように語る。「日本企業には、組織やプロジェクトのサイロ化問題があります。縦割り文化で、システムもそれぞれの組織によって異なる場合が多く、多層下請け構造で情報も共有されにくい。その結果、業務がブラックボックス化し、デジタル化の加速を阻む要因にもなっています」

NEC 環境・品質統括部 エバンジェリスト(AI・QMS・法務)
北村 弘 氏

 では、どうすれば日本企業はデジタル化を加速させ、世界的に競争力を高めることができるのだろうか。

 今岡氏は日本企業挽回のカギを握るのは「デジタルエシックス」だと言い切る。一見、スピードや変革を重視するデジタル化とは馴染まないようにも思えるエシックスが、なぜデジタル化を加速させるカギとなるのか。次ページ以降、その理由を詳しく説明する。