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リアルタイム解析エンジンという画期的なデータ活用技術の開発と、それを搭載したCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」によって、KARTEを使う人々が生み出す顧客価値を拡張し続けてきたプレイド。デジタル技術によって成長してきた同社は、劇的な進化を遂げるAI(人工知能)が加速させる社会や企業の構造変化をどうとらえているのか。そして、みずからの提供価値をどう革新しようとしているのか。同社のテクノロジー領域をリードする2人に聞いた未来像を、前後編の2回に分けて紹介する。
AIをつくる時代から使う時代に変わった
2022年秋に米オープンAIが公開したChatGPTは、瞬く間に世界中で1億人を超えるユーザーを獲得し、我々を驚かせた。それに象徴されるように、生成AIの進化と利用が目覚ましい速度で進んでいる。その社会的インパクトをプレイドのテクノロジーをリードする2人は、どう見ているのだろうか。
牧野 いまのAIは、ほんの数年前までのAIとは別物と言っていいほど進化しています。正直に言うと、私も4~5年前まではAIがこれだけ急速に進化するとは予想していませんでした。
最新のAIは、曖昧で抽象的なデータを取り扱えるようになっています。米国では、GPT-3(オープンAIが開発した大規模言語モデル)が登場した2020年頃から、「大きなブレークスルーが起きた」という話題で盛り上がっていましたが、その改良版であるGPT-3.5になって、曖昧で難しい日本語もかなり正確に解釈するようになりました。GPT-3.5を基盤にしたChatGPTが一般向けに公開されて、AIに劇的な進化が起こったことは、日本でも誰もが実感しているのではないでしょうか。
竹村 ChatGPTやほかの生成AIもそうですが、自然言語で対話できるチャットインターフェースにしたことも、これだけ爆発的に普及した理由の一つだと思います。ソフトウェアプログラムについて専門的な知識がなくても、ふだん使っている言葉で質問を投げかけたり、指示したりできるので、曖昧さを許容する高度なモデルを気軽に使うことができます。
牧野 開発のアプローチもまったく違います。従来のAIは、たとえば需要予測や画像認識といった対象となるタスクのフレームを設定して、それに必要なデータセットを学習させてモデルをつくっていました。いまの新しいAIは、(AIの性能を示す)パラメーター数が桁違いに多く、テキストや画像、動画、数式など膨大なデータを学習させています。その結果、文章や絵画、コンピュータプログラムを生成したり、データ分析や翻訳をしたりといった、マルチタスクを処理できる汎用性の高いモデルになっています。
竹村 過去のAIは、技術を扱わない人たちにとって遠い存在でした。機械学習やディープラーニングという言葉を聞いたことはあっても、実際にそれを使ったことがあるわけではなく、そういう技術で開発されたAIが組み込まれた製品やサービスを、そうとは意識せずに使っていた人がほとんどだったと思います。
ところが、オープンAIやグーグルは、巨額のお金と時間をかけて大規模で汎用性の高いモデルをつくり、それをチャット形式で使えるAIアプリとして一般の人たちに直接提供しています。それによって、AIがとても身近な存在になり、AIに何ができて何ができないのかという感覚を、専門家でなくてもつかみやすくなりました。AIをつくる時代から使う時代に変わったといえます。
AIが身近な存在になり、つくる時代から使う時代に変わったのだとしたら、企業経営のあり方や人々の仕事は、今後どう変わっていくのか。牧野氏と竹村氏は、AIの存在を前提とした本質的な変化が進むと予想する。