AI活用を前提としたPaaSで、新たな体験価値の開発をショートカット

牧野 いまのAIは構造化データ(ソフトウェアで扱えるように事前に定義した構造に整形されたデータ)だけでなく、非構造化データを取り扱えるようになってきました。これによって、データをより人間に近づける役割をAIが果たすようになると思います。

 たとえば、消費者の曖昧な言葉からその意味を理解し、商品・サービスと、それを使う顧客の間でどんな体験価値が生まれているかを把握するのにAIを活用できるのではないかと考えています。実際に、一部のサービスではそうしたAI活用を始めています。

 プレイドグループのエモーションテックは、アンケート結果やクチコミ、商品レビューなどのテキストデータをアップロードするだけで、生成AIが意味や感情を読み取るサービス「TopicScan」(トピックスキャン)の提供を開始しました。こうした非構造化データからの顧客理解と、KARTEによる行動データからの顧客理解をかけ合わせることで、顧客や体験価値の解像度が高まり、CXの改善につなげられます。

牧野祐己
プレイド 執行役員CTO

 また、プレイドの100%子会社であるRightTouch(ライトタッチ)も、カスタマーサポート領域に特化した大規模言語モデル(LLM)の実装を進めています。その第1弾として、カスタマーサポート向けプラットフォーム「RightSupport by KARTE」(ライトサポート バイ カルテ)に、LLMを使って顧客ごとに最適化されたFAQを自動表示したり、顧客が抱えている悩みとその解決策の組み合わせを自動生成して、カスタマーサポート担当者を支援したりする機能を追加しました。

竹村 KARTEはウェブサイトやアプリでの行動データを主な解析対象にしてきましたが、アンケート調査やクチコミ、カスタマーサポートなど顧客データの種類や流入経路が増え、蓄積されるデータ量は急速に増えています。今後、場の分散化と多様化が進めば、さらにデータ量は拡大します。

 その時に、どのような場であっても一定の需要が見込める標準機能はプレイドが開発し、KARTEの基盤に加えていきますが、ある場に特化した機能や、ある企業が独自に提供したいサービスの開発までは、私たちのリソースだけでは手が回りません。そこで、2023年7月にベータ提供を始めたのが、KARTEにはない独自の機能やアプリケーションを開発できる「KARTE Craft」(カルテ クラフト)です。

 KARTE Craftは、SaaSの一つ下のレイヤーであるPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)として提供しています。基本的なプログラミングの知識があれば、サーバーレス(開発者がサーバーを構築、運用管理する必要がない)で開発できますので、開発にかかる時間とコストを削減できます。

 AI時代に提供するPaaSなので、UI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)もAIにサポートしてもらう前提で設計しています。たとえば、AIに自然言語で指示することでいまやりたいことに近いドキュメントやサンプルコードを提示してくれたり、コードを自動生成できたりする機能を開発中です。まもなくベータ版として順次リリースしていく予定です。試しにちょっと使ってみるだけで、AIのサポートがないこれまでのPaaSより使いやすいことを実感していただけるはずです。自分も実際にAIにサポートしてもらいながら開発しているわけですが、もうAIがない開発に後戻りできません(笑)。
 

竹村尚彦
プレイド 執行役員 VP of Engineering & Product, Ecosystem

 プレイドがこれまで磨き込んできた、大規模なカスタマーデータをリアルタイムに解析し、CX向上のアクションにまでつなげる基盤技術を、KARTE Craftを通じて開放します。それによって、クライアントやパートナー企業の皆さんと一緒にそれぞれが実現したい顧客体験価値を追求できる環境を提供していきたいと考えています。

牧野 エンジニアとしての仕事の重要な部分は、ハードからソフト、そしてサービスへと、時代の流れとともにエンドユーザーに近いところへシフトしてきました。AIがコードを自動生成する時代になるとそれがもっと進んで、サービスやプロダクトの価値をエンジニアの視点でデザインすることが、最も重要な仕事になると思います。

竹村 AIによって人の能力が拡張されることで、マーケターやエンジニアといった職種や部門の壁がどんどん低くなり、自社独自の提供価値の創造という本質的な仕事へと収れんされていく気がします。