柴田 私が着任してから、デジタル戦略の中期ビジョンを策定しました。QVCは日本のテレビショッピング市場をリードしてきましたが、若い世代ではテレビを持たない単身者が増えており、テレビだけで成長を続けることは難しいという危機感があります。世の中で起こっている購買のデジタル化、消費者のデジタル化に対して最適なアクションを打っていくのが当社のデジタル戦略です。

 私はデジタルストアヘッドとして、eコマース事業と、テレビショッピングを含む当社のデジタルマーケティング全般を管轄しています。テレビショッピングはテレビというマスメディアを使った販売チャネルであり、デジタルストアはお客様一人ひとりへの個別対応が可能なチャネルです。マスメディアとパーソナライズメディアを組み合わせることで、当社独自の顧客体験をつくり上げていきたいと考えています。

 個別化されたデジタル体験をどれだけ増やせるかが大きなカギになりますから、その点で膨大な顧客行動データを瞬時に解析し、お客様一人ひとりに対して柔軟なアクションを起こせるKARTEをもっとうまく活用していく必要があると思っています。

最適な顧客体験を提供するためにベストなパートナーと組む

桑野 そうしたデジタル戦略を実行していくうえで、何か課題はありますか。

柴田 課題の前に当社のデジタルストアチームの優位点を挙げると、ポテンシャルの高い人材が多いと自負しています。また、早くからKARTEを導入していましたが、KARTEそのものがどんどん進化していることに加え、(カスタマーデータプラットフォームの)「KARTE Datahub」(カルテ データハブ)といった先進機能も追加で活用するようになりました。カスタマーデータをあらゆる顧客接点で使える環境が整ってきたので、マルチチャネルを展開しながらも連続性のある顧客体験を提供することが可能になっています。

 このように人材も環境も揃っているので、たいていのことは自分たちでできてしまいます。内製化できるのは利点ではありますが、ベストプラクティスなど外部の知見が入りにくくなるというデメリットもあります。要は、自前でやる部分と餅は餅屋に任せる部分のベストバランスが大事だと思います。

桑野 QVCはテレビショッピングという中核事業でここまで成長してきた会社であり、顧客接点やデジタルマーケティングの運用を含めてほぼ自前のオペレーションでその成長を支えてこられました。一般論として、そうした大きな成功体験を持つ場合、その殻を破るのは大変です。

桑野祐一郎
Yuichiro Kuwano
プレイド
執行役員/VP of Sales and Origination

柴田 私はそれほど難しいとは考えていません。その理由の一つは、QVCとして米国と欧州を含めたグローバルで、デジタルによる個別化を推進するという方向性を打ち出しているからです。

 もう一つの理由は、内製化できるといっても我々は別にデジタルツールを提供する会社になりたいわけではありません。デジタルプロダクトのライフサイクルは短く、すごいスピードで進化していますので、そこの専門性を我々だけで完璧に追求していくのは無理です。私たちにはない専門性を持ったパートナーと組んで、当社のお客様にベストなソリューションと顧客体験を提供する。それが私の基本スタンスです。

 幸いなことに、当社はKARTEシリーズのプロダクト群を導入しており、プレイドさんとはすでに関係を構築できていました。目の前にいいパートナーがいるのですから、プロダクトだけでなく人による支援という点でも関係を深めていきたいと考えたのは、自然な流れです。

濵﨑 私たちは「プロダクト×ヒト」のハイブリッドモデルによって、プレイドの提供価値を大胆に拡張する戦略を掲げており、それを実行するために顧客中心経営の全体設計から、その仕組みの計画・導入、運用・グロース(事業成長)までを一気通貫で支援するコンサルティング&ソリューション事業「PLAID ALPHA」(プレイド アルファ)を立ち上げました。

 柴田さんが策定されたデジタル戦略の中期ビジョンは、PLAID ALPHAが目指す一気通貫の顧客中心経営の実現という方向性とまさに一致していました。QVCは複数のチャネルで多様な顧客接点を持たれており、行動データや属性情報に基づいてお客様一人ひとりを高い解像度でとらえるための基盤も整っています。御社とともに、お客様にとって最適なカスタマージャーニーやパーソナライズされたコミュニケーションを設計して、それを支える組織やオペレーション、データ活用基盤などの仕組みに落とし込み、顧客中心経営の実現にチャレンジしていく仕事に心底やりがいを感じています。

濵﨑 豊
Yutaka Hamasaki
プレイド
プロフェッショナルサービス 統括責任者

柴田 プレイドさんとは、デジタルテクノロジーとデータを活用して成し遂げたいことのベクトルが一致していましたし、ちょうどいいタイミングでプロダクトと人的サービスを融合させた支援の提案をいただきました。

 当社の現場からは、デジタル戦略の実行に向けていい環境が整ったといったフィードバックが上がっていて、プレイドさんとの協働がうまく機能している手応えを感じています。