サマリー:インターブランドジャパンが毎年発表する「Best Japan Brands」の最新動向を読み解くと、事業を通してパーパスを実現する組織実行力がブランド価値の成長率、企業価値向上に大きく影響していることがわかってきた。

無形資産としてのブランドと企業が創出する経済価値との結び付きが強まる中で、インターブランドジャパンが2009年から発表を続けている「Best Japan Brands」への注目度がますます高まっている。最新版「Best Japan Brands 2024」の分析結果から、パーパス経営を企業価値向上につなげる道筋を読み解き、インターブランドジャパンCEOの並木将仁氏が解説する(本稿は、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部が企画し、2024年3月19日に開催されたセミナー「パーパスの浸透と企業価値向上」における並木将仁氏の講演内容を要約・再編集したものです)。

1位トヨタから100位タケダまで「Best Japan Brands」の最新動向

 インターブランドは1974年にロンドンで生まれたグローバルファームだ。インターブランドジャパンは1983年の創立で、すでに40年を超える歴史がある。戦略コンサルティングとクリエイティブ、行動変容や体験の実現を専門とするチームを社内に抱え、ブランド戦略の策定から体験づくりまでを一気通貫で行うことによって、企業の成長をサポートしている。

「ブランドが実現する効果は、さまざまあります。顧客に関していえば、(自社の製品・サービスを)選んでもらう、高く買ってもらう、買い続けてもらう。近年では、企業として人材を引きつけ、その人材を引き留めて、やる気を高めるという面でブランドの重要性が高まっています。さらには、投資家やパートナーから投資対象、協業相手として選ばれるという点でもブランドの効果が重みを増しています。顧客、社員、投資家・パートナーに影響を与え、経済的な価値を生む。ブランドの実効性というものを、そのようにとらえるべきだと私たちは考えています」。インターブランドジャパン代表取締役社長兼CEOの並木将仁氏は、そう語る。

 無形資産としてのブランドと企業が創出する経済価値との結び付きが強まる中、インターブランドが毎年発表している「Best Global Brands」および「Best Japan Brands」への注目度が年々高まっている。

 この2つのランキングは、1988年に開発されたブランド価値評価手法に基づいて企業を評価し、順位付けしている。同社では、企業の財務力、ブランドが購買意思決定に与える影響力、そしてブランドによる将来収益の確かさという観点からブランド価値を分析・評価する。ブランドの経済価値測定の手法として国際標準化機構(ISO)から認定を受けているほか、企業の持続可能性を評価する代表的な指標であるダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)でも活用されるなど、世界標準のブランド評価手法となっている。

 グローバルに展開される日本発のブランドを対象とした「Best Japan Brands」は2009年から発表を続けており、2024年2月の最新版「Best Japan Brands 2024」(*)では、1位のトヨタ(トヨタ自動車)から100位のタケダ(武田薬品工業)まで100のブランド価値と前年比の伸長率を明示している。

「Best Japan Brands最新版の全体動向を一つ挙げると、ブランド価値の伸長率低下があります。2023年発表のトップ100のブランド価値伸長率は前年比7.7%増でしたが、2024年発表では6.9%増に減速しました。その中でも価値を伸ばしているブランドがあり、それらのブランドを分析することで、経営の舵取りが難しい時代においてブランド価値をいかに伸ばしていけるかが見えてきます」(並木氏)

 ブランド価値を伸ばすには、その構造を知ることが第一歩となる。ブランド価値を構成する3要素について説明しよう。