次世代のブランディングは、人間軸で戦略をとらえ直す
3つのアップデートとは、価値の概念、経営、そしてブランディングのアップデートである。それぞれ詳しく見ていこう。
価値の概念は、企業のなすべきこと、戦略の軸、価値実現の主体を指す。企業のなすべきことは、「儲かる」ことから「善い」ことへ、戦略の軸は「競争」から「人」へ、価値実現の主体は「事業機能」から「企業総体」へとアップデートする必要がある。つまり、「(環境や社会、ステークホルダーなどにとって)善い経営を、人を軸にして、企業総体として実現していくことが必要になっています」と並木氏は言う。
経営においては、ブランドのスコープ(範囲、作用域)を「機能としての付加価値」ではなく「総体としての存在意義」、浸透のゴールを「認知・理解」ではなく「事業実態」、ステークホルダーとの関係を「ターゲット・競合・リソース」ではなく「パートナーとしてのエコシステム」としてとらえ直す。
そしてブランディングでは、戦略を静的にとらえて正解をなぞり、マーケティングコミュニケーションを行うのではなく、動的にとらえてあるべき姿を探索し続け、コーポレートコミュニケーションを行う方向に比重を移す。
こうしたアップデートを具現化していくためには、「戦略のとらえ方からブランディングを考えることがテーマになります」(並木氏)。従来の競争戦略では、「どの市場で戦うべきか」というポジショニングと、「どのように戦うべきか」というリソース・ベースト・ビューが基本となっていた。
これからは、「どう勝つか」ではなく、「いかに価値を創造するか」に戦略の軸足を移していくことが重要になる。それをさらに一歩進めて、人間軸で戦略をとらえ直すことをインターブランドジャパンでは提唱している。そこでは、市場のとらえ方、パーパスのとらえ方、そして、組織のあり方の転換が求められる。
つまり、「どんな競合相手と戦うか」ではなく、「誰にどう貢献するか」という視点で市場をとらえる。パーパスは、社会の変革に留まらず、人間本来のあり方まで踏み込んで策定し、その実現を目指す。そして、組織のあり方としては、現在地とパーパスをつなぐ道筋として、あるべき世界への思いや世界観、すなわちプリンシプルを明確にすることで格を高める。
「こうした考えを統合すると、パーパスをプリンシプルに落とし込み、人間的組織運営を行うことによって、人間的享受価値を創出し、これをパーパスに還元していくというループを描きます。これが、企業総体としての価値創造、意味のある事業成長を実現していくことにつながります」(並木氏)
この価値創造のループを回し続けることが、ブランドの価値実現であり、次世代のブランディングであるといえそうだ。
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