サステナビリティの取り組みとブランド価値成長率の相関
インターブランドジャパンが立てた仮説とは、サステナビリティへのコミットメントがブランド価値の成長に大きく寄与しているのではないか、というものである。そこで、Best Japan Brands 2024と東洋経済新報社のデータベース「CSR企業総覧(ESG編)2023年版」を用いて、その仮説を検証した。
同社では、企業のサステナビリティの取り組みのうち、特に関係が深いと考えられる8つの視点からブランド価値の成長ドライバーを読み解いた。すなわち、SDGs達成基準、ESG(環境、社会、ガバナンス)情報開示、投資家との対話、「社会貢献」担当部署の設置、サステナブル調達、社会課題解決の実践、社会課題の関心を高める社内活動、CSV(共通価値の創造)・社会課題解決の状況、の8項目である。
分析結果のポイントは3つある。まず、先に挙げた8つの項目をインターブランドジャパンが独自にスコア化したところ、Best Japan Brands 2024のトップ100と「CSR企業総覧(ESG編)2023年版」に掲載された1702社では、8項目の合計スコアの平均は前者が1.5倍も高かった。ここから、「経済価値が高いブランドは、サステナビリティにもしっかり取り組んでいることが見て取れます」(並木氏)。
2つ目のポイントは、価値の高いブランドにおいても、取り組みが進んでいる項目とそうでない項目がはっきりとしているということだ。Best Japan Brands 2024のトップ100は、8項目のうち6つで平均スコアが9点以上となっているが、SDGs達成基準は7.8点、CSV・社会課題解決の状況は6.9点と低い。
ブランド価値がプラス成長だったブランドとマイナス成長だったブランドを比較すると、プラス成長だったブランドは、全体として取り組みが遅れている2項目(SDGs達成基準、CSV・社会課題解決の状況)でマイナス成長ブランドに差をつけている。これが、3つ目のポイントである。
「この3つのポイントから、パーパスの実現に向けてサステナビリティにしっかり取り組んでおり、かつ、その実効性を担保していることが、ブランド価値の成長とそれを通じた企業価値の向上において非常に重要だということが読み解けます」(並木氏)
並木氏のこの分析は、Best Japan Brands 2024でブランド価値の成長率が最も高かった5つのブランドにぴたりと当てはまる。その5ブランドとは、ユニクロ、メルカリ、富士通、サントリー、味の素である。
並木氏は、「パーパスを全社で共有し、企業文化や事業活動に落とし込み、体現できている」「社会課題解決をビジネスで経済価値化できている」という2点が、成長率トップ5のブランドに共通しており、「ブランド価値の視点からも、パーパスを浸透させるだけでなく、事業として実現することが成長の分水嶺となっているといえます」と結論付ける。
この点を踏まえたうえで、企業価値向上のために今後どのようなブランディングが求められるのか。並木氏は、3つのアップデートが必要だと述べる。