データのインプットが飛躍的に増え、アウトプットの出し分けが可能に

大畑 りそなグループアプリは、2018年のリリース以来、アジャイルなアップデート、改善を続けていますね。

川邉 2023年時点でアップデート回数は180回以上、改善項目数は1200以上です。りそなグループアプリをリリースした頃は、通帳アプリとか家計簿アプリと呼ばれる、口座残高やクレジットカード明細などを見られる参照系API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)だけを実装したものがほとんどでした。

 私たちは、「スマホがあなたの銀行に」をキャッチフレーズに、振込・振替をはじめとするさまざまな銀行取引ができる更新系APIも備えたアプリとして、新たな価値創造を目指しました。最初は機能を絞り込んでリリースしましたが、アジャイル開発で取引機能をどんどん充実させていきました。現在は、ワンタップ振込や(定期預金や投資信託の)目標積み立て、ポイント交換などを自由にカスタマイズできる機能、資産形成をサポートする機能なども備えています。

大畑 りそなグループアプリの利用が広がったことで、データ活用戦略にはどのような変化がありましたか。

大畑充史
Atsushi Ohata
プレイド
執行役員

川邉 活用できるデータ量が桁違いに増えました。もともとオムニチャネル戦略を推進していた頃から、デジタルチャネルとフィジカルチャネルのデータを統合的に分析してお客様の解像度を高め、新たな価値を提供していこうと構想していたわけですが、りそなグループアプリによってデータの質と量が大幅に向上し、その実現性が高まりました。

 私たちは銀行グループですから、お客様の属性データや金融取引データを保有しています。そこにスマホアプリを通じて取得するログなど非金融データが加わったことでインプットが飛躍的に増え、お客様ごとに最適化したコンテンツ配信など、よりパーソナライズしたアウトプットの出し分けができるようになってきました。

 たとえば、銀行による顧客クラスター分類は従来、金融資産額に応じて区切る程度の大ざっぱなものでしたが、同じ富裕層でもお客様の趣味嗜好や行動パターンなどはそれぞれ異なりますから、画一的なアプローチをしてもまったく響きません。当社のデータサイエンス部は金融データと非金融データを統合的に分析して、銀行サービスの使い方によってお客様をグループ分けし、それぞれの特徴に応じた施策を打っています。そこでは、KARTEなどのプロダクトやトランスコスモスなどパートナーの知見をしっかりと活かし、インプットからアウトプットまでをきめ細かくつなげることができるようになりました。

大畑 お客様を中心としたりそなグループの企画、実行、検証のビジネスサイクルが、データ活用によってますますそのスピードと精度を高めていきそうですね。最後に、川邉さんたちDXチームが今後チャレンジしたいことをお聞かせください。

川邉 「リテールNo.1」という長期ビジョンを実現するためには、お客様を中心にしながら、私たち自身がどんどん変わらなくてはいけませんし、いまあるものを恐れずに捨てることも時には必要でしょう。その判断をぶれずに続けていくには、お客様を中心に据えて考え続けられるかどうかがカギだと思います。

 オープンな共創という点では、共創型の金融デジタルプラットフォーム構想の実現も積極的に進めていきます。これは決済や資産運用、データビジネス、本人認証などの機能を備えたデジタルバンキング基盤をAPIにより開放し、他社との連携を深めていくもので、地域金融機関とのアライアンスが実現しています。今後は地域金融機関だけでなく、一般事業会社や地方自治体にも機能の提供を目指していきたいと考えています。

 こうしたオープンプラットフォーム戦略によって、より価値のあるデータを蓄積し、新たな顧客価値創造にチャレンジしたいと思っています。

大畑 トランスコスモスとしては、りそなグループの将来構想をどう支えていきますか。

添谷 ウェブサイトやKARTEの運用、アプリやメールでの配信業務など、当社のさまざまなデジタル専門人材が、これまでりそなグループのDXに伴走してきました。これに加えて、コンタクトセンターの運用で培ってきたお客様の声を聞く力、そこから洞察を導き出す力が私たちの強みです。その強みとデジタルの専門性を組み合わせて、お客様を中心とするりそなグループのDXを加速させる本質的なパートナーになりたいと思います。

大畑 りそなグループやトランスコスモスがお客様にとって最適なサービス、顧客体験を提供していくための仕組みやプロダクト、ケイパビリティ(組織能力)を私たちプレイドとしてもどんどん進化させ、ともに顧客中心経営の実現にチャレンジしていきます。本日はありがとうございました。

※プレイドでは、データ経営を促進する組織論やデータマネジメントの成功事例をテーマとするカンファレンス「WHY DATA?」を開催します。豊富な知見と実績を持つプロフェッショナルの方々が登壇します。

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