会社も学校も同じ、学び終わったら卒業

内田 変わりたいか変わりたくないかの議論と同じだけど、チャレンジしたくない人にさせるのは難しい。でも、チャレンジしたい人の障害を取り除くのは簡単です。

仁科 STUDIO ZEROのメンバーには、その人のWILLとCANをよく聞きます。CANは組織としての短期的な業績に関わってくる部分で、会社(プレイド)として株式上場している以上、けっしておろそかにできないし、利益を伸ばさないとやりたいこともできません。

 ただ、より重視しているのはWILLの部分で、個人のWILLとSTUDIO ZEROとしてのWILLをベン図に描いて、2つの円が重なっている部分にチャレンジしてもらいます。ですから、個人と組織は常に対等、ないしは個人のWILLで仕事が決まるという点では、個人のほうが若干上かもしれない。そうしないとエンゲージメントが低下し、組織のパフォーマンスが上がらないということは、身に染みています。

内田 いま聞いていて思ったけど、プレイドとSTUDIO ZEROの関係もまったく同じじゃないですか。

仁科 まさにおっしゃる通りです。CEOの倉橋(健太氏)とはいつもそういう話をしていて、プレイドとして実現したい世界観とSTUDIO ZEROが目指す世界観を図に描いて、それぞれのステークホルダーにとってメリットがある道はどこかを判断しています。

内田 私は若い人たちに、会社選びも学校選びも同じだと言っています。学べることがある会社を選んで、そこで十分学んだと思ったら卒業して次のステージに進めばいい。給料をもらう以上は、もちろん会社に貢献しなければならないけど、学ぶことがなくなったらいつまでもいる必要はない。人生100年時代で、80歳まで現役で働くとすると同じ会社にずっといることはほぼありませんから、日本全体としてそういうモデルをつくるべきです。

 逆に会社の立場で言うと、いまいる社員に学べる機会、成長の機会を与え続けることができるかどうか。それができない会社は、少なくとも成長したいと思っている人からは選ばれなくなります。

仁科 STUDIO ZEROでは、ワークエンゲージメントをとても大切にしていますが、個人のWILLと組織のWILLの重なりがなくなった時に、無理に引き留めることは想定していません。

 個と組織の関係性が変わりつつあることを認識し、経営者みずからが組織と社員の関係性を見直し続けていかないといけないと思います。

内田 ただね、やっぱり変わりたくない人は一定数いる。それも本人の意志だから、尊重しなきゃいけない。大切なのは、その人が幸せな人生をどう過ごすかということです。

 50歳を過ぎてから「あなた、変わりなさい」と言われたら、「それはしんどい。でも、会社にいられなくなったら困る」と思う人はいるでしょう。社会全体の新陳代謝が高まって、労働市場の流動性が上がれば、50歳以上になってもそれまで学んできたことを活かせる場所がきっと見つかるはずです。

 むしろ、うちの会社は中高年しか採用しませんという会社があって、シニアマーケットに特化した商品やサービスを提供しているとか、個性的な会社がどんどん出てくればいい。若者だけの会社、女性だけの会社があってもいい。ほかの会社と違うことが、本質的な差別化であり、存在意義につながります。金太郎飴のように同じ会社ばかりの世の中では面白くないし、そういう社会は活性化しませんよ。