チェンジチャンピオンを孤立させない

内田 いまは正解がない世の中だから、企業も一つの正解を求めるとおかしなことになる。正解かどうかを決めるのは、顧客と市場です。

仁科 僕たちは、「産業と社会の変革を加速させる」というミッションを掲げています。もちろんSTUDIO ZEROだけでやれることではないので、顧客である企業や自治体との共創を前提にしています。

 内田先生が先ほどおっしゃったように変革は未知の領域への挑戦なので、何のために変革するのか、変革の先にどんな未来をつくりたいかという旗をしっかり立てないと、誰も一緒にチャレンジしてくれません。

 僕たちにとって、顧客は変革のパートナーなので、誰でもいいというわけではありません。顧客の話をすべて真に受けることが正しいということではなく、僕たちが立てた旗とその会社の旗印に重なっている部分がないと、共創は難しい。

内田 ちょっと意地悪な質問かもしれないけど、たとえば私が大企業の経営者だとして、「うちの会社を変えたいんだけど、STUDIO ZEROは何をしてくれるの」と言ったら、どう答えますか。

仁科 僕たちは聞かれる前に、提案するのが基本です。たとえば、「御社のこのアセットを活かして、こういう事業を立ち上げて、こんなゴールを目指したいのですが、一緒にやれませんか」といった具合です。

内田 「うちにどんなリターンがあるの」と聞かれたら。

仁科 いろいろなパターンがあります。ある大手商社の新規事業開発の例では、一つの事業本部の戦略にフォーカスして、バリューチェーンで欠けているパーツを合弁会社をつくって埋める提案をして、採用されました。また、グローバルに事業展開しているメーカーの例では、パーパスに基づく行動指針の組織浸透や評価設計に一緒に取り組んでいます。

内田 事業成果を出すより、変革の火種を植え付けにいく感じですか。

仁科 いえ、まずは何かしらの成果を出しにいくことを最優先します。そうでないと、一緒にやるメリットを感じてもらえなくて、チャレンジを継続できません。

 チャレンジを続けながら、その会社の中で賛同者を増やしていき、より大きな課題に一緒にチャレンジする。それを繰り返して、産業や社会の変革につなげる。そういうロードマップを描いています。

内田 支持が増幅するバンドワゴン効果を狙っているわけですね。

仁科 起業家のデレク・シバーズは、社会運動を起こすには周りからの嘲笑を恐れずに一人で踊り始める変わり者が必要だが、もっと重要なのは最初のフォロワーの存在で、フォロワーがいるからこそ変わり者がリーダーになれると言っています。僕もその通りだと思います。変革の先頭集団も大事だけど、2群目がさらに重要で、2群目が動き始めれば、3群目、4群目が続きます。

内田 変革の先駆者をチェンジチャンピオンと言ったりしますが、トリックスター的な人が多いので、孤立しがちです。組織の中で力のある人がバックアップするとか、周りの人がフォローする。そうすることによって、初めてチャンピオンの存在が活きてきて、大きなムーブメントが生まれます。

仁科 組織の中のチェンジチャンピオンを孤立させないことが僕たちの役割です。周りの人たちに火をつけて、一緒に産業や社会の変革を加速させる活動をしていく。それが僕らの理想です。

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