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新規事業のプロセス評価と
プロセス管理がなっていない
経営者たちは、新規事業がうまくいかないことにもっともらしい理由を探す一方で、たえず不満をこぼし続けている。
新規事業が実際に立ち上がる割合は低く、しかも失敗した場合だけでなく、成功した場合でも、そのコストが当初の見積もりを大きく上回ることがよくある。また、一つの商業的成功を生み出すには何千ものアイデアが必要であることが、いくつかの調査から判明している。
失敗する確率が高い理由は、新規事業の立ち上げプロセスはそもそも不確実な作業だからであるとされている。しかし我々の調査によれば、新規事業がもたらす価値が期待外れに終わってしまうのは、新規事業のプロセス評価とプロセス管理に欠陥があるからだ(囲み「新規事業の失敗を予感させる10の兆候」を参照)。
新規事業の失敗を予感させる10の兆候
1. 一か八かのイノベーション計画である。プロジェクトを最初の青写真どおりにしか見ず、秘められた可能性を見ない。
2. 具体的な仮説を立てて、これをテストし、そこから学習したことに基づいてプロジェクトを漸進的に改善する計画がない。
3. プロジェクトを承認するに当たり、上市までに要する資金すべてが含まれている。しかし、上市までのプロセスにおいて、マイルストーンを一つずつ無事クリアしていくことで、プロジェクトの継続性を確認するという要件はない。
4. プロジェクトは、クリアしたマイルストーンではなく、既存事業同様、カレンダーに従って進められ、評価される。
5. プロジェクト・チームのメンバーは、新規事業が無事立ち上がった場合に限って報いられる。プロジェクトが中止された場合、メンバーはマイナス評価される。
6. 一度承認され、立ち上がったプロジェクトは早期に一定規模の売上げや市場シェアを達成するよう、上から圧力がかかる。
7. プロジェクトは、社内の他部門から隔離された「スカンク・ワークス」(秘密のプロジェクト・チーム)で運営されている。
8. チーム・メンバーは、コア事業では素晴らしい実績があるかもしれないが、不確実で漠然とした状況にはほとんど経験がない。
9. CEOと他の経営陣は、新規事業プロジェクトが近い将来コア事業の落ち込みを埋め合わせると、公然と主張する。
10. 計画の進捗状況が、プロジェクトのメリットを評価する唯一の方法になっている。無形資産、見落とされている新しいチャンス、または将来のアイデアの手がかりとなりうるプラットフォームが特定されてもいなければ、モニターもされていない。
こうした評価および管理方法は、「新規事業投資における唯一の価値ある成果は、新規事業そのものである」という、もっともらしい仮説に基づいている。
いわゆる失敗(市場、利益率、または成長目標に合致しない新規事業)、不適合(最終的に、全社戦略に照らしてふさわしくない新規事業)、および予期せぬ失敗の副産物(新技術、新しい能力や知識の獲得)から、何らかの価値を抽出する努力があまりにも欠けている。
言い換えれば、「実行」(立ち上げに向かって継続する)と「中止」(途中で手仕舞いする)以外の選択肢についても十分検討できるように、新規事業の立ち上げプロセスを再設計すれば、イノベーション投資のリターンを大きく向上することができる。
実行と中止以外の選択肢には、別の市場に狙いを定める「リサイクル」、他社への売却やジョイント・ベンチャーなどの「スピン・オフ」、既存事業部門に吸収させる「スピン・イン」、プロジェクトの途中で新たに獲得・構築した技術、能力や知識、設備、評判、人脈、特許等を再活用する「救済」がある。
我々の結論は、過去16年間に個人としてあるいは共同で実施してきた、新規事業の立ち上げプロセスに関する広範な調査に基づいている。