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トヨタの未来はバランスにある
トヨタの方式では、何もかもが測定される。たとえば、組み立てられた新車の最終検査では、作業員がドアの開閉音を測定している。いかなる業績評価指標に照らしても、トヨタはいまや押しも押されもせぬ、世界で最も成功している企業の一つである。
この2007年、トヨタは創立70周年を迎える。また、乗用車の対米輸出を開始して50年目、さらに世界で最初に商用生産されたハイブリッド車〈プリウス〉を発売して10年目でもある。
昨2006年12月、2007年の予想販売台数を934万台と公式発表したが、もしこれが実現すれば、トヨタはゼネラルモーターズ(GM)を抜き去り、世界最大の自動車メーカーの座に着くことになる。
トヨタはすでに、世界一優れた自動車メーカーであろう。たとえば、顧客満足度調査のJDパワーやその他の調査機関は過去15年近くにわたり、製品の信頼性、出荷時の品質や耐久性といった面で、トヨタとそのラグジュアリー・カー〈レクサス〉に最高の評価を与えてきた。
それだけではない。トヨタは世界一収益性の高い自動車メーカーでもある。2006年度の税引後利益は137億ドルに達した。ちなみにGMとフォード・モーターはそれぞれ、2006年度に19億7000万ドルと126億1000万ドルの赤字を計上している。
さらにトヨタの時価総額は、2007年5月10日現在、1867億1000万ドルと、GM(166億ドル)、フォード(157億ドル)、ダイムラー・クライスラー(817億7000万ドル)の3社の合計額の約1.5倍以上に上った。
小さな織機メーカーとして創業し、愛知県の挙母(ころも)(現豊田市)に最初の自動車工場を建て、世界のトップにまで上り詰めたトヨタの足跡は、まさしく長期的経営の成功例であり、現代企業史における金字塔の一つになっている。
言うまでもなく、トヨタの躍進は短期間によるものではなく、その道のりはけっして平坦ではなかった。1980年代初期、トヨタは信頼性と燃費は優れていたが、そのデザインは地味だった。一方GMとフォードは、大型で、スタイリッシュで、人目を引くデザインの自動車をつくっていた。
トヨタは継続的改善によって、少しずつアメリカ車とのギャップを縮めていった。70年当時のアメリカでは、GMが乗用車市場と軽トラック市場のシェアを40%占めていたが、トヨタのそれはわずか2%にすぎなかった。
その後、トヨタはこのシェアを80年に3%、90年に8%、2000年に9%と小幅ながら拡大させていき、2001年には初めて10.1%と2桁に伸ばした。
トヨタのこのような前進を端的に表現しているのが「徐々に」という日本語であろう。これは、物事を「ゆっくりと、次第に、着実に」達成することを意味している。