顧客のライフジャーニーに事業横断でどう寄り添うか

 顧客との長期的なエンゲージメント構築を前提とするCX変革に取り組むうえで、リッジラインズが提唱しているのが「ライフジャーニー」を起点とするアプローチだ。ライフジャーニーとは、顧客の人生における時系列の変化を、ライフステージという区分に加え、そこにおける価値観・ニーズやライフスタイルという多角的な視点から可視化したものだ。

 たとえば、ライフステージの変化などに起因して個別事業の顧客が離脱してしまうことがあっても、事業をまたいで顧客接点を保ち続けることで、企業全体としてLTVを最大化できる。

 顧客の価値観やライフスタイルが多様化する中では、それぞれの人生のタイミングにおけるニーズの変化を複数のパターンで捉えることが重要であり、そのためのフレームとしてリッジラインズでは14の価値観による「Human & Values」モデル(*)を開発している。

 顧客のライフジャーニーに寄り添いながら3つの壁を乗り越え、事業間シナジーを創出するアプローチを、村瀬氏は3つのフェーズに分けて説明する。

 まず、戦略・ビジョンの壁を打破するには、事業横断で「自社グループらしさ」のある体験を提供するためのCXビジョンを策定する。その際は、顧客の価値観などを起点にライフジャーニーを可視化するとともに、企業全体の事業ポートフォリオや提供価値、それらを裏打ちする企業アイデンティティの棚卸しを行う。そして、変化する顧客ニーズに寄り添い、価値を提供し続けるための事業接点を整理する。

 次に、施策の壁を打破するために、事業間連携を前提に顧客接点およびコミュニケーション、サービスを再設計する。ここでは、企業全体として顧客のライフジャーニーに沿って連続性のある体験を提供するためのガイドラインを整理することがカギになる。

 そして、マネジメントの壁を打ち破るには、企業全体として顧客との関係性を評価、改善していくマネジメント体系を構築する必要がある。顧客のロイヤルティやエンゲージメント、LTVなどを捉える事業間共通のCX指標を策定し、CX指標と経営指標の関連性を明確化。事業横断でのモニタリングの仕組みやCX変革を推進する組織の立ち上げなどによって、総合的なCXマネジメント体系を築き上げる。

 一方、ビジョンや仕組みがあっても思うように変革が進まないケースも多い。「迅速なCXマネジメントの立ち上げと早期の成果創出には、日本企業の組織・文化に合った『ミドルアップダウン』型のアプローチによるクイックスタートとクイックウィンが不可欠」と、村瀬氏は述べる。

 ミドルアップダウンマネジメントは、経営学者の野中郁次郎氏らが知識創造理論において提唱した考え方である。村瀬氏の言うアプローチはこれをベースにしたもので、ミドル層のチェンジリーダーがトップ層と合意したビジョンに基づいて変革推進にコミットし、トップ層はそれに必要な権限を与える。そして、チェンジリーダーはCX指標と経営指標の関連性を明確に示し、現場層を巻き込みながら素早く実績を挙げ、その成果を事業部内から事業部間、さらに全社へと拡大していくのだ。

 事業の枠を超え、企業独自の提供価値を進化させ続けることは決して容易ではない。リッジラインズは、その挑戦と変革を支え抜く構えだ。

*:「Human & Values」モデルについて詳しくは、こちら

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