サマリー:事業間で分断されたデータやサービスをスムーズに連携させることで、顧客の生涯にわたって提供価値を高めることができる。三菱地所グループの会員サービス刷新プロジェクトから、その成功のカギが見えてくる。

三菱地所グループは、住宅系会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」のサービスと機能を大幅に刷新した。「A partner in life あなたの⼈⽣に寄り添うパートナー」というビジョンの下、住まい選びから入居後の生活まで一貫してサポートするデジタルプラットフォームを目指す。野村総合研究所グループのデジタル戦略会社NRIデジタルの支援により完遂された、この事業間連携プロジェクトの成功の要因はどこにあるのか。CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」でプロジェクトの実行を支えたプレイドの大畑充史氏が、三菱地所レジデンスの小笠原秀佳氏とNRIデジタルの吉田純一氏に聞く。

購入検討から契約・引渡し、入居後の生活まで一貫してサポート

大畑 三菱地所グループでは2024年9月、住宅系会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」の会員サイトをメジャーアップデートされました。これには、どのような目的があったのでしょうか。

小笠原 レジデンスクラブは三菱地所グループの4つの住宅系会員組織を統合し、2018年6月に発足したものです。従来は、会員優待特典やイベント、セミナーなどグループの住宅関連情報を横断的に入手できるプラットフォームとして機能していました。

 今回のメジャーアップデートに当たっては、レジデンスクラブはお客様にとってどういう存在であるべきか、そのために私たちは何を目指すのかを関係者の間で徹底して議論しました。そして、「A partner in life あなたの人生に寄り添うパートナー」というビジョンを掲げました。

 情報配信プラットフォームという役割に留まらず、住まいにまつわるさまざまな情報を一元的に提供し、各種手続きや三菱地所グループ担当者とのやり取りもウェブ上で完結させることで、住まい選びから入居後の生活までが便利で豊かになるよう、お客様の人生に寄り添うパートナーとしてサポートするプラットフォームを目指します。その第一歩として行ったのが、今回のメジャーアップデートです。

大畑 メジャーアップデートによって、レジデンスクラブのサービスや顧客体験はどのように進化したのですか。

小笠原 大きい点について言うと、ウェブ上での新築マンション購入検討支援サービスと引渡し支援サービスの機能を追加しました。

 これまで新築分譲マンションの価格表などの物件情報は、モデルルームに来場しないと得られませんでしたが、PCやスマートフォンで閲覧できるようにしました。3Dのモデルルーム画像や眺望写真も見られますし、周辺施設やハザードマップ、住宅ローンなどのコンテンツも提供しています。お客様は、モデルルームに足を運ばなくても、いつでも必要な情報にアクセスできます。

 引渡し支援サービスは、新築マンションの引渡しという重要ですが手間のかかる手続きをデジタル化したサービスです。入居に関わる資料の確認、内覧会の日程変更、各種書類の提出などをウェブ上で完結できます。お客様が電車で移動中でも海外にいたとしても、時間や場所にとらわれず手続きを進めることが可能です。不明点の解消やお問い合わせもオンラインでスムーズに行えますし、インテリアのオプションサービスや駐車場管理契約など、三菱地所グループで提供しているサービスを同じプラットフォーム上でご利用いただけるようアップデートを進めています。

 三菱地所コミュニティが管理するマンションの入居者には、入居届の提出や駐車場の契約申請などができるウェブサービスを提供しているほか、管理費の変更や設備点検などの通知をオンラインで受け取ることができます。

 サービスの対象とする物件を順次拡大しており、今後も新しい機能を追加していく計画です。