事業間連携でライフタイムバリューを高めるためのカギは
大畑 CX向上に取り組む際、KARTEでさまざまな施策を柔軟に実行することができますが、それによって社内ユーザーの業務量が増えすぎてしまうと長続きしませんし、CXの改善についてじっくり考える時間がなくなってしまいます。ですから、私たちはEX(従業員体験)の向上なくして、CX向上は難しいと考えているのですが、そのためにはCXプラットフォームの枠を超え、業務システムとリアルタイムかつ柔軟に連携させる必要があります。
それをどうやって実現させるか検討していたタイミングで、今回のメジャーアップデートプロジェクトについて吉田さんからお話があり、KARTEに標準装備していない新たな機能開発を含めて一緒にやらせていただくことになりました。私たちにとってはチャレンジングであると同時に、KARTEの可能性を広げる絶好の機会でした。

プレイド AVP of Ecosystem Department
KARTE Datahub事業責任者
吉田 私たちは2017年からKARTEを使ったさまざまなプロジェクトを手がけてきましたので、プレイドの皆さんとは普段からよくコミュニケーションを取っています。開発段階のプロダクトの構想を聞くこともあるし、私たちから開発チームに要望を伝えることもあります。
今回のプロジェクトでも、1週間で新たな機能を追加してほしいといった無理なお願いをしたこともありましたが、本番までに必要な要件の実装をすべて間に合わせることができました。
小笠原 今回は、かなり要件が複雑なプロジェクトでした。吉田さんたちNRIデジタルのメンバーは、当社の要望をじっくり聞いてよく理解したうえで、時間的に厳しいプロジェクトをうまくマネジメントしながら要望を実現してくれました。
システム開発プロジェクトには、想定しない事象やエラーの発生は付き物です。私たちから見ると、吉田さんたちがそうした事態に対処するうえでの切り札がKARTEで、今回のプロジェクトで言えばエンドユーザーである当社のお客様への影響を最小限に抑えながら、PoCを継続できたし、本番実装もできました。CX向上のための攻めの部分だけでなく、守りの部分でも、NRIデジタルとプレイドはとても強みを発揮できる組み合わせだと感じます。
吉田 今回は、小笠原さんのC・DX企画部を中心に三菱地所レジデンスの販売部門や契約、引渡しの担当部門などからもメンバーが参加する社内横断的プロジェクトであり、管理会社の三菱地所コミュニティとも連携するグループ横断プロジェクトでもありました。私たちにとってありがたかったのは、プロジェクトがキックオフする段階で、招集されたメンバー全員が「A partner in life あなたの人生に寄り添うパートナー」というビジョンをしっかり共有されていたことです。プロジェクトの途中で議論が行き詰まった時は、いつもその原点に立ち返ることができました。
C・DX企画部の方々はデジタルツールやデータを使って何ができるかをよく理解していらっしゃるだけでなく、現業部門の経験と知識が非常に豊富なことも、険しい山を登るに当たってはとても頼もしかったです。三菱地所グループの現場の方々と私たちの間に立ってコミュニケーションを円滑に進める“通訳”の役割を果たしてくださったし、他部門との調整がスムーズにいったのも現業部門で長く経験を積んでおられたからこそだと思います。
小笠原 ビジョンを決める時は侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がありましたし、ビジョン共有を図る際にも膝詰めで納得するまで話しました。サービスや機能をデザインする段階ではよくあることですが、現業部門からは「あれもしたい、これもしたい」「こんな機能がほしい」という要望がどんどん出てきます。そういう時はビジョンに立ち返り、「レジデンスクラブは何を目指すのか」をもう一度時間をかけて話し合いました。そういうプロセスを経て、みんなが腹落ち感を持てるようにしないと、現場の人たちが使ってくれるシステムになりませんし、自信を持ってお客様にお勧めできるサービスになりません。
吉田 それは真理だと思います。
小笠原 アップデートされたレジデンスクラブのサービスをすでにご利用いただける物件では、モデルルームに来場されたお客様の7割以上、契約者では9割以上が会員登録されています。時間をかけて何度もお客様の声を聞き、それをサービスデザインにきちんと反映できたこともありますが、顧客接点の最前線にいる社員が良さをわかって登録を勧めてくれていることも大きいです。ウェブサービスで一番ハードルが高いのは、会員登録していただけるかどうか。私たちC・DX企画部のメンバーもモデルルームなどの現場に足を運び、販売担当者へ「絶対にお客様の役に立つから、ぜひ登録をお勧めして」と、地道な活動を続けています。
入居後のお客様がオンライン上でマンション管理組合の総会を開催できる機能を追加するプロジェクトを三菱地所コミュニティと進めているほか、マンションの売却や賃貸を検討されているお客様を支援するサービスを仲介会社の三菱地所ハウスネットと共同で検討中です。このようにグループ会社同士で連携しながら新しいサービスを開発していく場合にも、まずは私たちのほうからグループ会社に足を運んで声をかけ、ていねいに説明したり話し合ったりしながら、レジデンスクラブを一緒に進化させていきたいと考えています。
大畑 複数の事業を展開している大手企業では、事業ごとに分断されている顧客接点をつなぎ、顧客の生活のさまざまなシーンや異なるライフステージでも、企業全体あるいはグループ全体として顧客接点を維持し、その時々で適切なサービス・商品を提供することによってライフタイムバリューを高めることを目指す例が増えています。
しかし、実際に事業の壁を越えて顧客起点で連携するのは簡単なことではありません。分断されているデータをつなぐ基盤が必要なのはもちろんですし、何より人と人、組織と組織のビジョンの共有や意思疎通、同じ目標に向かって進む協力体制が重要です。小笠原さんたちは、グループ全体で同じビジョンに向かって、人と人、組織と組織をつなぐ地道な活動をぶれずに続けておられる点が素晴らしいと思います。プレイドという外部パートナーとしての立場だけでなく、一人の生活者として、三菱地所グループがレジデンスクラブのビジョンを実現されることを期待しています。
株式会社プレイド
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